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『弱法師』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『弱法師』の読書ノートリスト

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  • ぼくは思うんだけど、雪も、砂漠も、それから海も、惜しみなく豊かにこの地上に与えれているものは、みんな清潔でどこかしら悲しいような気がする。(続きを読む
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marie1127さん
marie1127 さん(2013/08/07 作成)
  • 一匹の悪魔と百匹の天使を自身に飼い馴らしているのが作家なら、百匹の悪魔と一匹の天使をおのれの内に棲まわせているのが編集者だ。それがわたしだ。女衒のように作家に近づき、その肉体から彼の命を――小説を――最後の一滴まで絞り取る。からからに涸れ果てるまで、廃人になるまで、自殺して死ぬまで、追い詰めて攻め立てて抱きしめてひれ伏して爆弾を落として夜露に晒して火をつけて水を浴びせて踏みつけて踵を舐めてめったやたらに引き裂いて。この仕事は借金取りに似ている。わたしは神に代わって、作家が神から借りた金――才能――の取り立てをしているのである。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
  • わたしは強いのではない。 まだ誰かを死ぬほど愛したことがないだけだ。 愛するひとにこのからだを愛撫され、その手のかたちで捏ねられ美しく磨き立てられた賜物のような乳房をいまだ持たず、持たざるがゆえに失う悲しみもいまだ知ることがないだけだ。 愛するひとが黄泉の国へ旅立つとき、あの世への手土産に丹精した乳房を差し出すような、なりふりかまわぬ捨て身の恋を一度もしたことがないだけだ。 喉から血を流していとしい誰かの名前を呼び続けたことも、胸の谷間から脂汗を流してかつてそこにあったやさしい手の記憶を反芻し続けたこともない。 わたしは恋も、愛も、天国も、地獄も、何も知らない。 できることなら、こんなふうにぼろぼろになっても、胸がぺしゃんこに潰れるような思いをしても、年を取りすぎた大きい天使になっても、狂ったように愛し愛され、いとしい誰かと手に手を取ってこの世の淵からこぼれ落ちたい。打ちのめされ、追い詰められ、虚無に向かって行進していくような人生でもかまわない。 こんなふうに誰かを、ただひとりのひとを、一生かけて、馬鹿みたいに愛したい。 そうすれば母の人生が、苛烈ではあったけれど不幸ではなかったのだと信じることができるような気がするのだ。 そうして初めて、わたしはわたし自身の罪深い生を受け容れ、赦すことができるような気がするのだ。 そして明日も今日のように生きていけるような気がするのだ。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
  • あまりにも長く待ちすぎたものがようやく目の前に近づいてきたとき、人間は喜びよりも先に恐怖に陥ってしまうのかもしれない。自分は本当にそれを手に入れられるのか。手に入れた瞬間に色褪せはしないか。手に入れたら案外とつまらないものだったので落胆のあまり死にたくなりはしないか、と。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
  • 求めても得られないものはいつしか求めなくなるものだ。わたしはこうして諦めてきたのだ。愛という言葉を自分の辞書から葬ってきたのだ。そうして独りで生きることに決めたのだ。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
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