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『文学・評論』関連のレビュー(読書感想)読書ノートリスト

レビュー(読書感想)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • 『夜と霧 新版』

    夜と霧 新版

    ヴィクトール・E・フランクル / みすず書房

    強制収容所での経験を心理学的に記述した著作。収容段階、収容所生活、解放段階の3つに分かれている。 理屈で応えたくはない。僕自身の最期をここに感じながら応えたい。大いなる問いに向き合おうとする、この状態から抜けだすことは容易だ。しかし少なくともいまの僕はそれを望んではいない。 この著作の眼目は、第2章の後半、生についてより一般化された事実を論じる箇所だろう。109ページ以降。このような極限状態にあっても、人間は「どのような人間であるか」を決定する内面的自由を保持している。そしてその自由を積極的に行使することこそが人間の価値であり、生きることの意味だと。 未来をもつこと。目的をもつこと。120ページ。「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐えうる」(p128)特定の目的に生を還元することは、平時にも妥当だろうか?「自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない」(p134) 「わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ」(p129)「この要請と存在することの意味は、人により、また瞬間ごとに変化する」という表現をみると、これは岡本太郎的な「生に対する刻一刻の跳躍」を意味するのだろうか。 仏教の八苦の思想に通ずるものがあるだろうか?キリスト教の受苦とは?キリストが引き受けたものであり、一般的な信徒に課されたものではない? 「わたしたちのひとりひとりは、この困難なとき、そして多くにとっては最期の時が近づいている今このとき、だれかの促すようなまなざしに見下ろされている、と私は語った。だれかとは、友かもしれないし、妻かもしれない。生者かもしれないし、死者かもしれない。あるいは神かもしれない。そして、わたしたちを見下ろしている者は、失望させないでほしいと、惨めに苦しまないでほしいと、そうではなく誇りをもって苦しみ、死ぬことに目覚めてほしいほしいと願っているのだ、と。」(p139)このとき人は「眼差す」側ではなく「眼差される」側として存在するということ。そして「死に目覚める」とは何か。 僕もやがて老いるだろう。そして死に近づくだろう。そこにあるのは必ず、苦しみだ。直接の肉体的な苦痛はなかったとしても、不自由による苦痛、喪失による苦痛からは逃れえない。そのときフランクルの言葉はどのような意味をもつか。 とても厳しい、とてもとてもとてもとても厳しい考えだ。アウシュビッツにおいて、「尊厳を維持せよ」と語ること、それは激励であるよりも叱咤に聴こえる。例えばこのような記述。「現実をまるごと無価値なものに貶めることは、被収容者の暫定的なありようにはしっくりくるとはいえ、ついには節操を失い、堕落することにつながった。なにしろ『目的なんてない』からだ。このような人間は、過酷きわまる外的条件が人間の内的成長をうながすことがある、ということを忘れている。収容所生活の外面的困難を内面にとっての試練とする代わりに、目下の自分のありようを真摯に受けとめず、これは非本来的ななにかなのだと高をくくり、こういうことの前では過去の生活にしがみついて心を閉ざしていたほうが得策だと考えるのだ。このような人間に成長は望めない。」(p121) 「この世にはふたつの種族がいる、いや、ふたつの種族しかいない、まともな人間とまともでない人間と」(p144)これも厳しい考え方だ。もちろん、あれだけの環境を生き抜いた人間が厳しい考え方を抱かない方がおかしいのだとも言えようが。 愛の話。61ページ、妻を想い、愛こそが人間の達する最高の境地だということ。そこには相手からの見返りが必要ないどころか、相手の実体的な存在すら不要だということ。 自然、その美の救い。66ページ。「世界はどうしてこんなに美しいんだ!」 真摯に受け止めたいし、真摯に受け止めたいからこそ、その主張に感じる「理解不能な部分」を審らかにしておきたい。 宗教的な記述が少ないことに驚く。それは彼が科学者としてこの文章をものしたからか。「ユダヤ」という言葉を使わなかった理由と同様、これを特定の民族・宗教的受難者の経験の記述に留めたくなかったからか。 栄養失調者腹部が膨張するのはタンパク質の不足によるもので、この現象は飢餓浮腫と呼ばれる。 フランクルの他の著作にも触れてみるといいかもしれない。 旧訳者と新訳者の両名によるあとがきも、この著作をめぐる物語を感じさせるものだった。 (続きを読む
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    tsuzuki670さん
    tsuzuki670 さん(2015/02/26 作成)
  • 『ムーミンを読む (ちくま文庫)』

    ムーミンを読む (ちくま文庫)

    冨原 眞弓 / 筑摩書房

    挿絵がとても素敵。特にムーミンパパとムーミンママの嵐での出会いのシーンの挿絵が好き。パパ目線(溺れているママを助けようとしている)、ママ目線(溺れながらもハンドバッグの心配をしている)、このあたりの感覚のズレとかも何とも言えない。 (続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2015/02/16 作成)
  • 『新編 普通をだれも教えてくれない (ちくま学芸文庫)』
    読み終えるのに時間がかかり、肩がこった。 本屋さんでたまたま見つけて、衝動買いで買った本だったが、不思議な偶然が2つあった。 本の中に出てくるハンナアーレントという哲学者(思想家?)の名前にどこか聞き覚えがあるなと思ったら、今日見たDVDの映画の主人公の名前だった!!読みながら、河合隼雄だったらもっと砕けた話で読みやすいんだけどなぁ、この人の話堅苦しくて疲れるなぁと思いながら読んでいたら河合隼雄の名前が出てきた!!(普段、河合隼雄の本をよく読んでいる) 内容についてはまだ消化しきれていないから、感想が書けないけど、この偶然だけは先に書いておこうと思った。 この偶然が何を意味するのかについても考えてみたい。(続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2014/12/26 作成)
  • 『ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)』

    ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)

    E.L. カニグズバーグ / 岩波書店

    ベンとジョージは同じ人物だ。でもベンにはわからないことがジョージにはわかっていて、ベンをうまく誘導したり、弟との関係もよくしたりする。結局1人の人間の中に、全て備わっているということなのか。 最後にベンは、自分を理解しようとせず変わり者扱いしたり、自分を平気で落とし入れたりする人たちにさえ温情をかけてやる。自分がやってもいない罪をかぶることで。それがベンの価値観なんだろう。 1冊の本を読むことの幸せは、スイカの例えにあるような幸福かもしれない。(続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2014/12/22 作成)
  • 『物語とふしぎ (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 3)』
    ”ファンタジーは単なる作り話ではない。” 不思議の国のアリスのお話が出てくる。この歳になるまで、単なる作り話と思っていたけど、今読むと、「ああ、今、自分、ウサギの穴の中に落っこちちゃってるな…」としみじみ実感している。 ”アリスの首が伸びたり” 「ああ、分かるなあ、それ…」って思う。 昔は、何それ?どういうこと?って、思いながら読んでたような気がする。子どものころや、若いころより、中年になってからの方が、ファンタジーは面白いのかもしれない。(続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2014/12/15 作成)
  • 『あたえる人があたえられる』

    あたえる人があたえられる

    ボブ・バーグ / Bob Burg / ジョン・デイビッド・マン / John David Mann / / 海と月社

    【本のあらすじ、要約】 イケイケの結果思考の右肩上がりやり手営業マンが、 自分の真の成功を掴むために、 富のメンターたちに、5つの法則を叩きこまれていく話 【何が書いてあったか?】 1 価値の法則 2 収入の法則 3 影響力の法則 4 本物の法則 5 受容の法則 この法則を人生に適用してほしいという著者の主張 【そこから何を学んだか】 自分をいかに信頼して、 自分のありたい像になるための法則 生き方だけでなく、働き方まで考えさせられた。 これぐらいの勢いで運を引き寄せて生きたい。 【それをどう活かすか?】 生きてきて受け取りすぎてるものを、 どんどん与えていくマインドを持ち、 出会った人、もともと関わっている人に、 自ら、小さなことでも奉仕して、 相手の利益を常に考えてあげ、 自分自身を活用してもらう。 そして、何かの縁だと何事も思って、 受け入れること。 これは、本当に忘れやすいので、 心に刻む。 この本に出会えて良かった。。。 【本文に関してはコチラ】抜き書き 分かちあうp26 共有の概念は前から知っていたが、 もっと分かちあおうと思った。 お金儲けをは悪いことではない。むしろ、素晴らしいこと。 しかし金儲けを目標にしても成功はしない。p26 確かに、このとおりだとおもった。 金儲けを目標にし過ぎな人が多い。 だから、大きな目的を掲げる上での手段としてのお金にしようと思っている。 与えること27 与えることからすべてが始まると思っている。 与えること、分かち合うこと、そういったことに全力を注いでいる29 全力を注いでいるかと問われれば、そうでもなかった。 ひもじい思考に陥っていた。 たいていの人は世界を、無限の宝庫ではなく、 限界のある場所だと思って育つ。 力を合わせて一緒に何かをつくりあげるところではなく、しのぎを削って競い合うことだと思ってしまうのです。29 そうや、無限の宝庫なんやから、一緒に何か作り上げたほうがいいがな。 そこに喜び感じるんやから、実は。 表紙帯より: 「大きな贈り物は小さな包に入っている」 これは、なんとなくイメージしやすい言葉だと思った。(続きを読む
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    hideさん
    hide さん(2014/12/14 作成)
  • 『汝の名 (中公文庫)』

    汝の名 (中公文庫)

    明野 照葉 / 中央公論新社

    少しずつ明らかになる女二人の素性と関係。いったい何を拠りどころに考えるとこんなことになるのだろうか。人は外見に非ずとはいうが、あまりも内面がアカラサマになってしまうのも、人は人に非ずとなって、とかく世は住みにくいだろう。(続きを読む
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    huang1111 さん(2014/11/13 作成)
  • 『明日の空 (創元推理文庫)』

    明日の空 (創元推理文庫)

    貫井 徳郎 / 東京創元社

    3編の短編かと思いきや、ちゃんとつながっていた。ミステリーでもありファンタジーのようでもある。 幅の広い貫井さんの作品は順次読んでいくつもりだが、もしこれを最初に読んでいたら縁がなかったもしれない。『慟哭』や≪症候群シリーズ≫などの作品を読んでいたからこそ楽しめた一冊になった。こうした軽い感じのミステリーやポップな作品にも挑戦しながらも、シリアスに豊かな作品を世に問う作家であって欲しい。 *この作品がTVドラマだったら、クリス・ハートの『 まもりたい~magic of a touch~』がエンディングで流れてきそうな感じも・・・(続きを読む
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    huang1111 さん(2014/11/12 作成)
  • 『徳川家康(1) (山岡荘八歴史文庫)』

    徳川家康(1) (山岡荘八歴史文庫)

    山岡 荘八 / 講談社

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    JumbleSoulさん
    JumbleSoul さん(2014/05/06 作成)
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