深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)』の読書ノート作成者:h_nagashima さん
『2012/11/24 作成
タクシーとは名ばかりで、後部の荷台を取りはずし、むき出しの車体に固い椅子を取りつけた代物のために、しっかりつかまっていないと振り落とされかねない。私を乗せた三輪タクシーは、ニューデリーからオールドデリーの暗い夜道を、音だけは威勢よく走っていった。
しばらくは快調に走り続けていたが、ガソリン・スタンドの前にさしかかったとたん、運転手は車を停め、エンジンを切った。ガソリンがないと言うのだ。もうこれ以上は動かないと言う。そして、私の顔色をうかがいながら提案してきた。
「あそこで入れたいと思うのだが」
私は彼の魂胆が読めたので知らん顔をしていた。
「あそこで入れるがいいか」
「勝手にするがいいさ」
突き放すと、運転手が予想していた通りの台詞を吐いた。
「でも、金がない」
「俺の知ったことではない」
「走れないがそれでもいいか」
その言い草に腹が立ったので、それならここまでの分も払わない、別の車を探すからいい、と言って車から跳び降りると、慌てて、いや、やはり動く、とエンジンをかけた。
(P.28~)
しばらくは快調に走り続けていたが、ガソリン・スタンドの前にさしかかったとたん、運転手は車を停め、エンジンを切った。ガソリンがないと言うのだ。もうこれ以上は動かないと言う。そして、私の顔色をうかがいながら提案してきた。
「あそこで入れたいと思うのだが」
私は彼の魂胆が読めたので知らん顔をしていた。
「あそこで入れるがいいか」
「勝手にするがいいさ」
突き放すと、運転手が予想していた通りの台詞を吐いた。
「でも、金がない」
「俺の知ったことではない」
「走れないがそれでもいいか」
その言い草に腹が立ったので、それならここまでの分も払わない、別の車を探すからいい、と言って車から跳び降りると、慌てて、いや、やはり動く、とエンジンをかけた。
(P.28~)
MEMO:
こういうエピソードを読むと、本物の旅をしている、と感じる。
h_nagashima さん
キーワードで引用ノートを探す