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『クドリャフカの順番―「十文字」事件』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)クドリャフカの順番―「十文字」事件』の読書ノート作成者:Yuhi さん

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「ひとにものを頼むという行為は、二種類に分けられる。一つは、見返りのある頼みごと。もう一つは、見返りのない頼みごと。
 見返りのある頼みごとの場合、相手を信用してはいけない。長い付き合いにならないことが予想される場合、相手は十中八九、やらずぶったくりを考える。仮に考えなかったとしても、必ず、自分の労力を最少にしようとする。だから、見返りを用意した場合は、相手が自分が頼んだだけの仕事をしてくれるとは思わず、日程と作業量に十分な余裕を持たせる。相手が動かなかった場合のことも考えて予備の計画を用意しなくてはならない。それが嫌なら、相手にもリスクを負わせることだ。
 やらずぶったくりを狙う心理を逆に利用して結果的に手伝わせる手もあるが、これはお前には難しいだろう。あくまで短期間ならの話だが、信を置くに値するのは後者、見返りのない方だ。
 その場合、相手を動かすのは精神的満足感だ。物質的満足感を得るための行為で手を抜くことはあっても、精神的満足感を得るための行為で手を抜くことはない。『カリスマ性』『伝統性』を使えれば最高なんだが、これは使いたいと思って使えるものではない。『信仰』『愛』も強力だというが、下準備に十分な時間が必要になる。まあ、この二つは私も使ったことがない。
 できれば『正義感』『使命感』や『プロ意識』、『自尊心』を使いたいが、これも中級以上だろうな。コツがわかると、この辺は汎用性があるんだが。
 逆を攻めれば、『恐怖』や『露悪趣味』というのも考えられる。いまは関係ないがな。
 お前がいますぐにでも使えそうな、初歩的なのは『期待』だろう。
 相手に『自分に頼る他にこいつには方法がない』と思わせることだ。自分は唯一無二の期待をかけれらている、と感じた人間は、実に簡単に尽くしてくれる。自己犠牲さえ厭わないことも、珍しくない。相手に期待するんだ。ふりだけでいい。
 加えて、一つ注意することがある。問題をあまり大きく見せてはいけない。『自分が助けると、こいつは絶体絶命のピンチを脱出する』と思わせては駄目だ。自分のちょっとした手助けで他人が莫大な利益を得たり致命的な不利益を回避したりすることを快く思う人間は、多くはない。自分には些細なことだが相手にはそこそこ大事なことらしいな、というラインで攻めるのが重要だ。優越感をくすぐれる。
( もう一つ。できれば人目のないところで、異性に頼むことだ。)」 *118~120頁より*


「……期待って言葉を軽々しく使いすぎる。……自分に自信があるときは、期待なんて言葉を出しちゃあいけない。……期待っていうのは、諦めから出る言葉なんだよ。時間的にとか資力的にとか、能力的にとか、及ばない諦めが期待になるんだよ。ネルソンが、英国は諸君がその義務を果たすことを期待するっていう旗を揚げたとき、ネルソンは自分一人でフランスに勝てるとは思っていなかった。期待ってのは、そうせざるを得ないどうしようもなさを含んでいなきゃどうにも空々しいよ。……自分にもできると思っていて、そんなこと言うもんか。」 *278~279頁より*
MEMO:
 この本では『期待』という言葉が意味深に思われる。
 『期待すること』と『甘えること』の違いも。
 ひとに何か頼むとき、少なからず、どんなに低くとも心のどこかで『期待』している。頼みごとをすることについて抜き出しテキスト部分のように深く考えたことがなかったから、一度さらりと読んだだけではよくわからずゆっくり二度読んだ。そして振り返ってみると過去に思い当たる節がないでもない。が、このようにとりひきめいた頼みごとは意識してやったとしても私にはきっとできない(結果的にそうなることになったとしても)。私にはまだ飲み下せないので、こちらにおいてちょっと熟成させておこう。私も振り返ったときには少し変わっているかもしれない。

言葉にできない、言葉にしにくい心模様が伝わってくる本。
さん
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