ヴェネツィア 水の迷宮の夢』の読書ノート作成者:haruga6 さん
『2012/12/28 作成
波が砂のうえに残す模様と、ジュラ期の海獣魚竜を祖先に持つ人間という名の怪物(モンスター)が、その模様をじっと見詰めるということとの間には、たしかに何か進化論的な、自伝的なかかわりがあるように思われる。ヴィネチアのファザードの垂直方向にのびるレース模様は「時」、その別名は「水」が、堅い地表(テッラ・フエルマ)に刻み付けた最高に美しい線である。それに直截的な依存関係ではないとしても、そのレースを陳列するものが方形になる性質があること、つまりこの町の建物の形と、形という概念を軽蔑している水の無秩序性(アナキー)との間には、明らかに何か対応があるように思える。それはまた空間が、他のどこよりも、ここではそれが時間にかなわないことをよく承知していて、時間が持っていない唯一のもので、精一杯対抗しようとしているみたいでもあるのだ――すなわち美によって。だから水はこの答を受け取るかのように、それをねじ曲げ、それを叩き付け、それをずたずたにする。だが結局は何も傷つけることなく、その大半をアドリア海に流しこむのだ。
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haruga6 さん
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