『反哲学史 (講談社学術文庫)』の読書ノートリスト
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- 精神の本質は自覚にありその自覚は労働(自己外化)を通じて達成される、という時に考えているのは、右のような事態のですが、それは同時に実現でもあるわけです。もっとも、そうした労働は決して一回限りで済むものではなく、労働を通じて対象を自己の分身に変じ、そこでアットホームに感じたとしても、それはつかの間で、その間に労働の主体たる精神をすでに大きな成長を遂げているわけですから、実現された成果のうちに自己自身の十全な似姿を見ることができないのです。それは再び精神に異他的な対象として対立してくるわけでしょうから、精神は再度より高次の労働によって、対象に働きかけていかねばなりません。このように対象との直接的統一の関係(正)破れてそこに矛盾対立(反)が生じ、それが労働を通じて再び統一される(合)といったふうにして精神がその自覚を深め、より大きな自由を獲得し、いわば真の精神へと生成してゆくその運動の論理が、ヘーゲルのいわゆる「弁証法」に他なりません。そして、ヘーゲルによれば、世界史とは、人間精神がこのように絶えず高められてゆく労働(自己外化)を通じて、外的世界に働きかけ、一歩一歩自覚を深め自由を獲得してきた過程なのですから、弁証法とは正しく歴史の論理だと言うことになるわけです。(続きを読む)
chiyorin さん(2015/08/04 作成)