『採用基準』の読書ノートリスト
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- 【第6章 リーダー不足に関する認識不足】 (2011年に起こった福島第一原発の事故対応について)問題が発生した初期の頃、世界中が日本の対応に不信感を高めたのは、日本の当事者らが国際原子力機関や欧米各国の専門企業と「共に問題を解決する」という姿勢を見せなかったからです。彼らは終始、「自分たちだけでしっかり対応するから心配してもらわなくても大丈夫」とアピールし続けました。自分たちだけで問題を解決することは、日本では「他人に迷惑をかけない、責任感をもった立派な対応」と見なされます。しかしこういった態度は、関係者の力を結集してチームで解決するのが当然と考える欧米からは、「何かを隠しているのではないか」と見えてしまいます。福島第一原発の事故は、単なる日本の事故ではなく、世界中の原子力ビジネスや原発政策を左右しかねない世界の事故でした。自国の原子力政策にも影響が及ぶと怖れた海外の専門家が、共同で問題解決に当たりたいと考えたのは当然です。 日本に不足しているのは「リーダーシップ・キャパシティ」だということです。これは,「日本全体でのリーダーシップの総量」を意味します。つまり,日本の問題はカリスマリーダーの不在ではなく,リーダーシップを発揮できる人数の少なさにあります。 私たちはなぜこんなにも早く,新首相を見限ってしまうのでしょう。私はその理由を,国民が「トップ一人を変えれば,短期間で一気に何もかもがよくなるはず」という幻想をもっているからだと考えています。有権者の中には「たった一人で日本の窮状を根本的に変えてくれるスーパーリーダーが現れるはず,存在しているはず」という意識があるのです。そしてそういう人が出てくるまで何度でも「今度の首相もだめだった・・・・」と失望し,次々とトップを替え続けるのでしょう。しかし,そんなことは誰にとっても不可能です。誰か一人,坂本竜馬のような人が現れても日本は決して変わりません。一億人もの構成メンバーを擁する国が,たった一人の力で劇的に変わったりはしないのです。 一人の偉大なるリーダーを待ち望む気持ちは,誰かが,この大変な現状を一気に変えてくれるはず,という他者依存の発想に基づいています。自分たちは何もせずただ普通に暮らしていれば,いつか誰かスゴイ人が現れて,世の中をよくしてくれる,という救世主への期待です。(中略)こういう人を待ち望む気持ちは,裏返せば思考停止と同じです。神頼みと何も変わりません。 変わることができるのは,「問題を解決し,今までとは異なる未来をつくり出すのは自分たちだ。それを率いてくれる新しいリーダーがやってきた」と考える組織です。 現在の日本で起こっているさまざまな問題の根底には,リーダーシップ・キャパシティの不足という共通の課題が存在しています。日本に足りないのは,専門知識でも技術力でもありません。地頭のいい人が足りないわけでも,日本人が勤勉さを失ったわけでもないのです。そうではなく,知識や思考力や勤勉さを総動員し,目の前の問題を解決していくためのリーダーシップを発揮できる人の数が,あらゆる場所において不足しているのです。(続きを読む)
masudakotaro さん(2013/10/27 作成)