楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』の読書ノート作成者:haruga6 さん
『2012/12/07 作成
フィンセントは、ポールが気に入るように、新しい家で絵を描きたい気分になるようにと細部にいたるまで気を配りながら、夢中になって昼も夜も働いて、その家にペンキを塗り、家具を入れ、飾り付けをし、壁を絵で埋めていた。
けれどもお前には「黄色い家」は居心地がよくなかったね、ポール。というよりも、視線を移すとどこからも攻撃的に襲ってくる、まぶしくてくらくらする色彩の洪水に気分が悪くなった。またフィンセントが心遣いをしながら、またへつらいながらおまえを迎え、おまえにいい印象を与えようとして「黄色い家」で彼がやったことを誇示しながら案内し、それらがおまえに気に入ってもらえたかどうかを知ろうとやきもきしているのも、居心地が悪かった。実際、その家はおまえに警戒心を抱かせ、なにか圧迫感を与えた。フィンセントは過剰ともいえるほど愛情にあふれ、親切だったので、おまえは最初の日から、この手の人間はおまえの自由を束縛することになるのではないか、そして自分の生活というものがなくなってしまうのではないか、フィンセントがおまえの生活に入り込んできて、愛情いっぱいの看守人となるのではないか、と感じ始めていた。おまえのように自由な人間にとって、この「黄色い家」は監獄になる可能性があった。
P324
けれどもお前には「黄色い家」は居心地がよくなかったね、ポール。というよりも、視線を移すとどこからも攻撃的に襲ってくる、まぶしくてくらくらする色彩の洪水に気分が悪くなった。またフィンセントが心遣いをしながら、またへつらいながらおまえを迎え、おまえにいい印象を与えようとして「黄色い家」で彼がやったことを誇示しながら案内し、それらがおまえに気に入ってもらえたかどうかを知ろうとやきもきしているのも、居心地が悪かった。実際、その家はおまえに警戒心を抱かせ、なにか圧迫感を与えた。フィンセントは過剰ともいえるほど愛情にあふれ、親切だったので、おまえは最初の日から、この手の人間はおまえの自由を束縛することになるのではないか、そして自分の生活というものがなくなってしまうのではないか、フィンセントがおまえの生活に入り込んできて、愛情いっぱいの看守人となるのではないか、と感じ始めていた。おまえのように自由な人間にとって、この「黄色い家」は監獄になる可能性があった。
P324
haruga6 さん
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