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『和漢朗詠集 (講談社学術文庫 (325))』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)和漢朗詠集 (講談社学術文庫 (325))』の読書ノート作成者:akinomiya さん

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燭を背けては 共に憐れむ深夜の月
花を踏んでは 同じく惜しむ少年の春
白 (巻上 春の部 春夜の歌)

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めどもかくれぬものは夏虫の身よりあまれるおもひなりけり
(巻上 夏の部 螢の歌)

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秋きぬと目にはさやかにみえねども風のおとにぞおどろかれぬる
敏行 (巻上 秋の部 立秋の歌)

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林間に酒を煖(あたた)めて紅葉を焼く
石上に詩を題して緑苔(りょくたい)を掃ふ
白 (巻上 秋の部 秋興の歌)

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秋風の吹くにつけてもとはぬかな荻の葉ならば音はしてまし
中務 (巻下 風の歌)

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泰山は土壌を譲らず かるがゆゑによくその高きことを成す
河海は細流を厭はず かるがゆゑによくその深きことを成す
李斯(巻下 山水の歌)

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泉飛んでは雨声門(しやうもん)の夢を洗ふ
葉落ちては風色相(しきさう)の秋を吹く
相如 (巻下 山寺の歌)

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いのちだに心にかなふものならばなにか別れのかなしからまし
(巻下 餞別の歌)

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和風(くわふう)先づ導いて薫煙出づ
珍重たり紅房(こうはう)の翠簾(すいれん)に透けることを
(巻下 妓女の歌)

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世の中はとてもかくてもおなじこと宮も藁屋もはてしなければ
(巻下 述懐の歌)

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世の中をなにゝたとへむ朝ぼらけこぎゆく舟のあとの白浪
沙弥満誓 (巻下 無常の歌)
MEMO:
読んだのは2005年の8月。買ったのは20世紀最後か21世紀最初の年?

『和漢朗詠集』を最初に知ったのが、最初に引用したものから。大和和紀さん『あさきゆめみし』で、光源氏と六条御息所が初めて会った時、光源氏が上の句を詠み、すかさず六条御息所が下の句を詠じた場面があった。
(紫式部『源氏物語』にこの問答があるかは不明)
六条御息所の教養の高さに、光源氏は瞠目して惹かれていく・・・というエピソードからもお解りのように、当時の貴族には必須の教養書。
当時は小学生でどの古典の引用なのか判らず、判ったのは高校生の頃、古典の参考書で(笑) 長年の謎が解けて嬉しかったな~♪

巻上・巻下の二巻に分けられ、巻上では春夏秋冬の四季にちなんだ和歌や詩句を、巻下では各テーマを設け、和歌や詩句が集められています。唐詩人の詩句、日本の詩句、日本の和歌という順序で構成。

ちょっとピックアップしただけでも、平安朝の貴族の「美意識の集大成」といった観があります。
「占いでお風呂に入る日を決め、体臭をごまかすために薫香をたきしめた」という悪評もある平安貴族。しかし鋭敏な眼差しと感性の豊かさによって極められた美意識は、日本史上で最も優れていたのではないでしょうか。

当時の貴族たちに最も愛されたのが、白居易(白楽天)の『白氏文集』。本書でも1割以上は白楽天の詩句が占めている。
どれくらい愛されていたかの例を挙げるなら、清少納言『枕草子』の「雪のいと高う降りたるを」の段が人口に膾炙してますね。
確かにいいな~と思って付箋紙を貼ったのが、白楽天のものが多くなってしまうのも否めません。それくらい魅力が溢れているのです。
そのせいか、白楽天はお腹いっぱい状態になってしまった私(苦笑) 『白氏文集』読みたいな~という気が萎えてしまった。
どちらかといえば『文選』読みたいな~という思いが強くなった。文庫で出して下さい、講談社学術文庫さん、岩波文庫さん!

「古典とっつきにくいな~」という人にこそ本書はお薦め。
忘れがちな良き日本の四季や自然の美しさを感じられ、勅撰和歌集からピックアップされたアンソロジーでもあり、後世の古典にも『和漢朗詠集』から引用された作品がたくさんあります。
季節ごと・テーマごとに読んでも、充分楽しめること請合います。(私もそうすれば良かったと後悔)
さん
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