楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』の読書ノート作成者:haruga6 さん
『2012/12/07 作成
長いあいだ、アブサン酒をちびちび飲みながら、フィンセントはときにはおまえの理解を超えるようなことを話した。けれども、夜明けにフィンセントが、目に涙をためてうめくようにして言った言葉を、おまえは理解したし、けっして忘れはしなかった。
「自分の絵が人々に精神的な慰めを与えられたら、と俺は思っているんだよ、ポール。キリストの言葉が人々に慰めを与えたようにな。古典絵画では『光輪』は永遠を意味していた。その『光輪』とは今、俺が絵の中で色彩の放射と振動とで取り戻そうとしているものなんだ」
ポール、おまえには彼の絵で使われている色彩が暴力的で度を越していると思えて、その花火のような眼をくらませる光景が好きではなかったが、それからは、以前よりも敬意を払っていたね。狂ったオランダ人には、おまえの背筋を時にぞくっとさせるような殉教者のような資質があった。
P329
「自分の絵が人々に精神的な慰めを与えられたら、と俺は思っているんだよ、ポール。キリストの言葉が人々に慰めを与えたようにな。古典絵画では『光輪』は永遠を意味していた。その『光輪』とは今、俺が絵の中で色彩の放射と振動とで取り戻そうとしているものなんだ」
ポール、おまえには彼の絵で使われている色彩が暴力的で度を越していると思えて、その花火のような眼をくらませる光景が好きではなかったが、それからは、以前よりも敬意を払っていたね。狂ったオランダ人には、おまえの背筋を時にぞくっとさせるような殉教者のような資質があった。
P329
haruga6 さん
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