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『別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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【2 埼玉・大出嘉之殺害事件】
この事件の最大の謎は,そして木嶋佳苗という女の一番の不可解さは,カネを搾取したことが発覚しそうになると,子どもが積み木でも崩すように,あるいはゲームに飽きた中学生がリセットボタンでも押すように,相手をいとも簡単に目の前から消していることである。

木嶋佳苗の殺意の“沸点”は異様に低い。

この日の木嶋の服装は黒のカーディガンに,緑色のインナー,下は薄いベージュのパンツだった。髪の毛は,二年半以上拘留されているとは思えないほど艶があり,毛先はきちんと巻かれている。(「埼玉事件」の第三回公判)

この裁判がひどく疲れるのは,木嶋の話がほとんどウソで塗り固められているからである。

検察官が木嶋から佐藤に送ったメールをモニター画面に映し出したとき,木嶋佳苗は先天的なウソつきだということを確信した。

検察官によれば,木嶋はキウチワカコという名前で吉川桜に,つまり自分自身にメールを送っているという。

恋人という男にも自分の正体を明かさない。それどころか,「親しい友人」をネット世界の中に作りだして,自作自演までして恋人をほんろうする。そこに,木嶋佳苗という女の怪物性もあれば,凄絶なまでの孤独感もある。

付き合った男の勃起能力を高めるために精力剤をすりつぶしたのと同じ乳鉢で,金品を奪った男をこの世から抹殺するために睡眠薬をすりつぶす。

男性との同時並行交際と並ぶ木嶋佳苗のもう一つの習性は,「死人に口なし」を忠実に実践していることである。具合が悪いこと,自分に不都合なことはすべて死んだ人間にかぶせてしまえば,とりあえず辻褄は合う。

木嶋は最初のメールでは<男女のお付き合いですから,肉体関係の相性もあると思います。もし私の事を本気で結婚相手として考えてくださるなら,交際期間中も避妊しなくてもかまわないと思っています>と書いておきながら,板橋が木嶋の要求通りのカネを用立てられないと知るや,掌を返したようにこんなメールを送ってきた。<お金を立て替えてもらえないのであれば,私に対しての愛情や誠意がない証拠だと判断せざると得ません。今後のことは私も考え直します>

四十一歳にもなって母親からお泊りデートの前に下着から靴下まで取り揃えてもらうような過保護息子だから嫁の気手がないんじゃないか,だから木嶋佳苗のような女の毒牙にかかってしまったんじゃないか(後略)。

四十一歳にもなっていまだ親がかりの男の見本がいる。

一月二十日に公判で木嶋佳苗と久しぶりに再会したわけですね。そのときの率直な印象から聞かせてください。「俺は最初『違う人じゃないか』と思った。『二年半でここまで老いてしまうのか』とびっくりしたんだ。法廷で検察官に『被告人を知っていますか?』と聞かれて,『知りません』と答えたくなったほどだ。テレビではしきりに『ル・コルドン・ブルー』の卒業写真が流されているけど,実際本人に会った俺としては,あれは本当の佳苗さんじゃない。『なぜ,あんなブスでデブな女にだまされたんだ』。テレビを観た人は,みんなそう言うけど,俺にとって彼女はそれほど醜くなかった。少なくとも俺と会った二年半前はそうではなかった。俺が会ったのは彼女が三十四歳のとき。今では皮膚は垂れ下がり,顔も膨れてしまったが,当時はまだ可愛かったんだ」(神津辰巳の証人尋問)

「自分で努力するところがまったく見えなかったところだね。とにかく『援助してください』の一本槍なんだ。そんなおカネはないと言うと,『それなら,もう帰ります』と言って,スタスタ歩いて行っちゃった」(神津辰巳の証人尋問)


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