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『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」…』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―――正義という共同幻想がもたらす本当の危機』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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【第4章】その2
ノルウェーと日本とでは,殺人事件の人口比はほぼ同じくらいと考えることができる。(中略)ただし刑事政策の方向は真逆。

「犯罪者のほとんどは,貧しい環境や愛情の不足などが原因で犯罪を起こしている。ならば彼らに与えるべきは苦しみではない。良好な環境と愛情,そして正しい教育だ」

「もちろん,少数ではあるが,とても邪悪な魂を持ってしまった犯罪者もいる。つまりサイコパスです。でもならば,彼らに罰を与えても意味はない。この場合は治療しなければならない」

ノルウェーには死刑も終身刑も無期懲役もない。刑罰の最高刑は禁固21年。どんなに凶悪な事件の加害者だとしても,これ以上は求刑されない。ただし出所の際には,住まいと仕事があることが条件になる。この二つが決まっていなければ出所できない。でも長期受刑者の場合,住まいや仕事は失っていて当たり前だ。ならばどうするか。その場合には国が,住まいと仕事を斡旋する。だから再犯率はとても低い。

「最高で21年の刑期を終えて着の身着のままでいきなり世の中に放り出されても,また結局は犯罪に走る可能性が高い。それでは彼や彼女の処遇のための費用も含めて,国家にとっては大きな損失です。大切なことは彼や彼女に罰を与えることではなく,社会の一員として再び迎え入れることです。国民はそれをわかっています。不満などまったくありません」

東海テレビ放送の情報番組「ぴーかんテレビ」が起こした「怪しいお米セシウムさん」騒動だ。(中略)この番組を見て「そうか。岩手山のお米はセシウムさんなのか」とか「怪しいお米なのか」と思う人が,実際にどれくらいいると考えているのだろうか。

岩手の農業関係者たちが怒るのはまだわかる。でも大きな声をあげて怒っている人たちの多くは,被災者でもないし農業関係者でもない。

もう一度念を押すけれど,東海テレビのこの番組は確かにお粗末だ。関係者は猛省すべきだし,心から謝罪もすべきだ。でもそもそもはCG担当者の悪戯心だ。オンエア直後には取り返しのつかない事態に,担当者やスタッフたちは放心状態だったはずだ。決して岩手のお米の評判を地に落としてやろうとか,被災者たちをさらにひどい目にあわせてやろうなどと計画したわけではない。責められるべきではあるけれど,これほどに血相を変えて批判され,糾弾され,罵倒されることだろうか。あまりに一罰百戒がすぎる。

もしも連合赤軍事件がオウム後に起きていたら,彼ら革命兵士の多くは,当然のこととして死刑が無期懲役の判決を受けていたはずだ。結局のところ,連合赤軍事件で処刑された人は一人もいない。現状においてオウムの死刑確定囚は13人で無期懲役は5人。厳罰化はこれほどに進んでいる。その帰結としてこの社会は,学んだり考えたりする機会を失い続けている。

ちなみにヨーロッパの多くの国で指名手配犯のポスターは,原則的には存在しない。なぜなら無罪推定原則に抵触するからだ。

一審有罪率が99.9%を超える日本では(世界レベルの平均は80〜90%くらい),「検察官が有罪を証明しないかぎり被告人は無罪として扱われる」とされる無罪推定原則が,ほとんどなし崩し的に無効化されている。容疑段階で名前や顔写真を公表することは,刑事訴訟法336条や国際人権規約に定植することは明らかなのだけど,そんな指摘もほとんどない。
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