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『スティーブ・ジョブズ I』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)スティーブ・ジョブズ I』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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 マックチームの古参メンバーは,ジョブズに反論しても大丈夫だとわかっていた。問題をきちんと理解していれば反論してもジョブズは怒らないし,にっこり笑って褒めてくれることもある。そして1983年ごろ,現実歪曲フィールドに詳しい一部メンバーは,その先があることを発見する。必要なら指示を黙殺しても大丈夫なのだ。その結果うまくいけば,権力を無視する意思の力や反逆者精神が評価される。そもそも,彼自身がそうしてきたのだから当然かもしれない。
 当時,製品グループ同士は対抗心むき出しで争っていたが,海賊旗の一件のように楽しんでいる面もあった。マッキントッシュチームは週90時間も働いているとジョブズが自慢したのを受け,「週90時間,喜んで働こう!」と書かれたスウェットをデビ・コールマンが作ると,リサグループは「週70時間で製品を出荷中」というシャツで応酬する。
 その日の午後,マッキントッシュチームがバンドリー3ビルに戻ったあと,駐車場に1台のトラックが到着し,ジョブズの指示で全員がトラックのところに集まった。罪には新品のマッキントッシュが100台。1台ずつ,チームメンバーの名前が書かれたプレートがついていた。「これをスティーブがひとりずつ渡してゆくんです。笑顔で握手して。残り全員の拍手を浴びながら。」
 厳しい旅だった。ジョブズの管理スタイルにはうんざりするのはもちろん,残酷なことさえあって多くの人が心に傷を負った。それでも,マッキントッシュを生み出すのは,ラスキンにもウォズニアックにもスカリーにも,アップルの他の誰にもできないことだった。フォーカスグループや設計委員会からも生まれない。マッキントッシュ発表の日,どういう市場調査をしたのかとポピュラーシエンス誌の記者にたずねられたジョブズは鼻で笑った。「アレクサンダー・グラハム・ベルが電話を発明したとき,市場調査をしたと思うかい?」
 ジョブズと違い,ゲイツはコンピュータプログラムを習得しており,考え方は現実的で規則を重んじる。分析能力も高い。ジョブズはもっと直感的で夢見がちだが,技術を使えるようにする,デザインを魅力的にする,インターフェースを使いやすくするなどの面にするどい勘が働く。完璧を強く求める情熱があり,そのせいで他人に対してとても厳しく,カリスマ性と広範囲・無差別な激しさで人を動かす。ゲイツはもっと整然としている。きっちりとスケジュールが組まれた会議で製品レビューをおこない,緻密なスキルで問題の核心に斬り込む。両者とも無作法な態度を取ることがあるが,ゲイツの場合,手厳しい言動もその原因は感情的な冷たさよりも知的な鋭さにあり,個人攻撃的な意味合いが薄い。ジョブズは燃えるような激しさで相手の目を見つめる。ゲイツはアイコンタクトが苦手だが,他人には基本的に優しい。
 ゲイツの目の前で,ジョブズは,奇矯なふるまいで社員を振りまわしたり強いこだわりを示したりした。「スティーブは例によって究極のハーメルンの笛吹きモードで,マックが世界を変えるんだと言い切り,すさまじい緊張感と複雑な人間関係で,正気とは思えないほど皆を働かせていました。」ハイな状態から一気に落下し,不安をゲイツに漏らすこともあったという。「金曜夜,みんなでいっしょに夕食を食べに出かけるろきは,万事最高だと言い続けるわけです。ところが次の日は,まず間違いなく『どうしよう,アレは売れるのかなぁ,困ったなぁ,値段を上げなきゃいけない,こんな話をしてごめん,うちのチームいはばかばっかで』みたいになるのです。」
 「マイクロソフトが抱えている問題はただひとつ。美的感覚がないことだ。足りないんじゃない。ないんだ。オリジナルなアイデアは生み出さないし,製品に文化の香りがしない・・・僕が悲しいのはマイクロソフトが成功したからじゃない。成功したのはいいと思う。基本的に彼らが努力した成果なのだから。悲しいのは,彼らが三流の製品ばかりを作ることだ。」
 「チームが成長するとき,多少ならBクラスのプレーヤーがいてもいいと思ってしまうが,そうするとそいつらがまたBクラスを呼び込み,気づいたらCクラスまでもいる状態になってしまう。Aクラスのプレーヤーは同じAクラスとしか仕事をしたがらない,だから,Bクラスを甘やかすわけにはいかない・・・そう,僕はマッキントッシュの体験から学んだんだ。」
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