『スティーブ・ジョブズ I』の読書ノートリスト
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- 「工場にゆくと,白い手袋をはめてほこりをチェックするんだ。ほこりはいたるとこりなった。機械の表面にもラックの上にも床にも。だから,きれいにしろとデビに指示した。工場の床の上に直接食べ物を置いて食事ができるくらいにすべきだと言ったんだ。(中略)僕も,あのころはなぜそう思うのか,はっきり説明できなかった。いま思うと,日本で見た光景に強い影響を受けていたんだ。日本のすばらしいところであり,僕らの工場にかけている点は,チームワークと規律だと思う。工場をきれいに保てるだけの規律がなければ,あれだけのマシンをちゃんと動かせるだけの規律もないってことなんだ。」 ジョブズは他人の操縦がうまいと有名で,実際,そうしようと思えばあらゆる方法でたくみにおだてて取り込んでしまう。だが意外なことに策謀や計算は不得手だし,他人のご機嫌を取る忍耐力もなければそういうことができる性格でもない。 「コンピュータグラフィックスに惚れ込んでいたので,どうしても自分で買いたかった。ルーカスフィルムコンピュータ部門の人々と会ったときわかったんだ。アートとテクノロジーを組み合わせるという面で,彼らはずっと先を行っているって。僕がずっと興味を持っている領域で,ね。」もう数年もしたらコンピュータは100倍もパワフルになる,そうなればアニメーションやリアルな3Dグラフィックスが大きく進む,とジョブズは考えた。 「人は創造的な動物で,発明した人間が想像もしなかった使い方を見つけてくれる――僕はそう考えている。マックのときはそうだったし,ピクサーのコンピュータでも同じようになるはずだと思ったんだ。」 普通の消費者がピクサーのソフトウェアで3D映像を作るようになるという予想は外れたが,優れた芸術とで自他rつ技術を組み合わせれば従来のアニメーション映画を一変させられるという直感は,まさに先見の明と言えるものだった。 しばらくロビーに座って話をしたあと,ジョブズは妹とふたりだけで散歩に出た。ジョブズは,自分とあまりによく似ている妹がいたことにわくわくしていた。ふたりとも芸術に強い興味があり,鋭い観察眼を持っている。強い感受性と意志も共通していた。夕食に向かう途中では建物の同じ部分や同じオブジェに注目し,それについていろいろと語り合った。 「素晴らしい収穫は粗末なものから生まれる,喜びはがまんから生まれる,と父は信じていました。物事はその反対へ振れるという,ほとんどの人が知らない法則を理解していたのです。」 ジョブズと別れたあと,レドセはメンタルヘルスに関するカリフォルニアのネットワーク,オープンマインドの創設にかかわった。そのとき自己愛性人格障害について学び,ジョブズはこれだったんだと納得したという。「腑に落ちることばかりで,いろいろ大変だったこともみんな説明がつくのです。だから,あの人にもう少し親切になってほしいとかもう少し自分中心なところを減らしてほしいといか思うのは,目の不自由な人にいろいろちゃんと見てほしいと願うようなものだったのだとよくわかりました。娘のリサへの接し方もようやく理解できました。たぶん共感が問題だったんだと思います。共感する能力があの人に欠けていたことが。」 ジョブズは意のままに人を魅了できるし,そうするのが好きである。その結果,アメリオやスカリーのように,それを自分に対する好意や敬意の表れだと思い込む人が出る。ジョブズはジョブズで,相手が望んでいるとかじれば心にもないあいそを言い,その印象を強める。しかしジョブズという人間は,好む相手をはずかしめもすれば,同じように嫌いな相手を魅了もする。 ジョブズはなんでも自分がコントロールしないと気が済まない性格だが,同時に,先行きが不透明だと思うと優柔不断となり,前に進めなくなってしまう。完璧を求めるあまり,中途半端なもので妥協したり,可能なものでがまんしたりが上手にできないことがある。複雑なものへの対処も好まない。(中略)この性格は,やる気にもはっきりと表れる。これが正しいと確信したジョブズは誰にも止められない。しかし少しでも疑いがあると消極的になり,自分にとって必ずしも都合のよくないことを考えずにすまそうとする。 「我々も常識とは違うことを考え,アップルの製品をずっと買い続けてくれている人々のためにいい仕事をしたいと思う。自分はおかしいんじゃないかと思う瞬間が人にはある。でも,その異常こそ天賦の才の表れなんだ。」 (続きを読む)
masudakotaro さん(2013/09/08 作成)