『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)』の読書ノートリスト
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- 【終章 変わりゆく世界】 人工知能で引き起こされる変化は,「知能」という,環境から学習し,予測し,そして変化に追従するような仕組みが,これまた人間やその組織と切り離されるということである。 人工知能が人間を征服するといった滑稽な話ではなく,社会システムの中で人間に付随して組み込まれていた学習や判断を,世界中の必要なところに分散して設置できることで,よりよい社会システムをつくることができる。それこそが,人工知能が持つ今後の大きな発展の可能性ではないだろうか。 産業への波及効果 ①広告,画像診断,ネット企業→ディープラーニングによって画像認識の精度が向上すると,従来のマス向けの画一的な広告から,個人の趣味嗜好に応じたターゲティング広告が一般化する。また,レントゲンやCTなどの画像をもとにした診断を自動で下せるようになる。 ②パーソナルロボット,防犯(警備会社+警察),ビッグデータ活用企業→音声や手ざわり感など,マルチモーダルな認識精度が劇的に向上することが見込まれる。そうなると,ソフトバンクが2014年に発表した人型ロボット「ペッパー」のように,人間の感情を認識して定型のコミュニケーションをしたり,店舗内で接客したりするロボットが普及する可能性がある。また,動画の認識精度が向上することで,街中に張り巡らされた防犯カメラによる防犯システムが構築され,犯罪検挙率が向上するかもしれない。 ③自動車メーカー,交通,物流,農業→周囲を観察するだけだった人工知能が,自分の行為の結果,周囲にどんな影響が出るか認識できるようになると,ロボットのプランニングの精度が上がる。その結果,たとえば現在,グーグルが先行してテストを繰り返している自動運転技術が実用化され,商品を消費者に届けるテストワンマイル(物流センターと消費者を結ぶ最後の区間)はもしかすると,無人ヘリコプターのドローンが担っているかもしれない。農業の自動化も含め,主に身体を動かす労働の分野で人間の代わりに働くロボットが普及するのもこのころだろう。人間が何らかの判断を担い,コントロールしている分野である。 ④家事,医療・介護,コールセンター→行動に基づく抽象化ができるようになると,たとえばロボットが「人間の手を強く握ると,人間は痛いと感じる」といったことを理解して,痛くないようにやさしく握る,傷つけないように運ぶなど,人間にしかできなかったような繊細な行動ができるようになる。その結果,物流や農業など,それまで「モノ」を対象としてきたロボットの活動範囲が,対人的なサービスにまで広がるだろう。 ⑤通訳・翻訳,グローバル化→人間が持っている「概念」のかなりの部分を獲得した人工知能は,それぞれの概念にふさわしい「言葉(記号表記)」を割り当てることで,言葉を理解するようになる。Siriのような音声対話システムも,人間が用意した記述に基づいて答えるのではなく,人工知能が外界をシミュレートしながら,思考して答えられるようになる。同時に,機械翻訳も実用的なレベルに達するため,「翻訳」や「外国語学習」という行為そのものがなくなるかもしれない。言葉の壁がなくなることで,これまで以上に,ビジネスのグローバル化が進むはずだ。 ⑥教育,秘書,ホワイトカラー支援→人間の「言葉」を理解できるようになると,人類が過去に蓄積してきた知識を人工知能に吸収させることができる。その結果,人工知能の活動範囲は人間の知的労働の分野にも広がっていくはずだ。たとえば教育であり,初等教育や受験といった決められたもの以外にも,必要に応じて人工知能が身につけた上で教えてくれることも可能になるかもしれない。また,臨機応変に状況を判断し,必要なときには学習して対応するといった秘書的な業務や,さらにはホワイトカラー全般の支援もできるようになるだろう。 (続きを読む)
masudakotaro さん(2016/11/13 作成)