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『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』の読書ノートリスト

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  • 【第1章 美由】 厚生労働省の「児童養護施設入所児童等調査結果」(2008年2月1日)によると,里親に委託された子どものうち,約三割は虐待された過去を持つ。当然,この子たちは「虐待の後遺症」を背負って,里親宅にやってくる。 「虐待を受けた子どもたちが抑えこんでいた怒りは,保護されて安心や安全を感じるようになることで,次第に表に出てきます。本来,その怒りは虐待をした親に向けられるべきものなのでしょうが,子どもにとってそれは危険極まりないことです。親を攻撃すれば,もっと激しく親を怒らせてしまい,仕返しをされるのがわかっているので,怖くてできない。そして,そのやり場のない怒りは,優しく保護してくれる人達に向かってしまうのです」(あいち小児・診療科の新井康祥医師) 「解離」とは脳が器質的な傷を受けていないのに,心身の統一が崩れて記憶や体験がバラバラになる現象の総称だ。たとえば記憶が飛んでいたり,気づいたら全く別の場所にいたり,ある年齢の記憶がなかったり,有名なものでは2つ以上の人格が存在する多重人格など。それらを総称して「解離」と言う。 あいち小児での臨床経験から,虐待を受けた子どもには解離症状が見られることが多い。 「解離過程症状としては,離人感(もの事の実感がなくなってしまい,とても苦しい現象),被影響体験(何かに操られているような感じ),解離性幻覚(お化けが見えたり,お化けの声が聞こえたりする),トランス体験(没我状態に陥る現象),交代人格状態(一人の人間に別の人格が現れる現象),スイッチ行動(ふだんとは違った状態へとスイッチが切り替わる現象),解離性思考障害(内なるお化けなどの声に邪魔されて考えがまとまらない)などがある」 あいち小児で「解離性障害」と診断を受けた子どものうち,八割が被虐待児だった。 「落ち着いてからそのこと(切れたこと)を聞くと,子どもはその間のことを『知らない』『覚えていない』と言います。子どもによってはキレイに人格が分かれている場合と,そこだけ記憶が抜け落ちている場合といろいろですね。人格が分かれている場合を『解離性同一性障害』と呼んでいます。昔で言う,多重人格です。ほかにも解離症状としては『自分が自分でないような』存在する実感の乏しさや,自分がどこかへ行ってしまって,なんで自分はここにいるんだろうとなるもの(遁走)などがあります」(あいち小児の新井康祥医師) (続きを読む
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masudakotaroさん
masudakotaro さん(2014/12/23 作成)
  • 【第4章 明日香】 2008年2月1日時点の「児童養護施設入所児童等調査結果(厚生労働省)によれば,入所理由で最も多いのが,「母の精神疾患等」で18.9%。注目すべきは「両親の放任・怠惰」や「両親の虐待・酷使」「棄自」など虐待にあたる理由で,これらを含めれば27.3%と最大の入所理由となる。 彩加ちゃんは病院の待合室で目が合った人には誰でもべたべたとくっついて,その人のバッグを開けて中身を片っ端から出していくという行為も繰り返したという。人との距離感が取れないのは愛着障害の典型的な行動であり,また,施設には「これは誰かのモノ」という私物の概念がないための行動だ。 「『おいしいね』って私たちが食べるところを見せないと,子どもは大人が“食べる”ということがわからないのです」 一般に「親の,子への愛は無償だ」と言われるが,虐待を見ていく限り,それは逆だとしか思えない。子の,親への愛こそが無償なのだ。 【第5章 沙織】 厚生労働省から発表される,児童相談所における「相談種別対応件数」(2010年度版)の割合においても,「身体的虐待」が38.3%,「ネグレクト」が32.7%,「心理的虐待」が26.5%に対し,「性的虐待」は2.4%と非常に低いものとなっている。性的虐待の相談件数が全体の3%前後というのは,年によって相変化はない。 この数字が実態とかけ離れていると,臨床現場からの指摘がある。 「あいち小児保健医療総合センター」において,2001年11月から2011年10月までの期間に,虐待で治療を行った患者数は1110名。そのうち性的虐待を受けていたのは男性56名,女性132名の計188名で,全体の役17%にも上っている。 あいち小児の新井康祥医師は,性的虐待の被害者を治療してきた経験からこう語る。「トラウマを抱える被害者全般に言えることですが,本人はまるで悪くないにもかかわらず,自分を責めたり,自己評価が低かったりします。だから,虐待の件について,『それは,お父さんが悪いと思うよ』と伝えても,『えっ,そうなの?』と言ってくれればまだましで,しばらく治療してからも,『自分が悪かったから仕方がない』とか,『お父さんのおかげで生活できているから』『お母さんにあまり迷惑をかけられない』と話す子も多いので,とても根が深い問題だと思います」 あいち小児でカルテを作った親の実に63%が性的虐待の被害があり,解離性同一性障害という診断名がついたケースでは42%にも及んでいる。 トラウマ治療である「EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing=眼球運動による脱感作と再処理法):患者の目の前に指を二本立てて左右に振り,患者が目でその指を追い眼球を動かすという眼球運動を主な特徴とする治療法だ。眼球運動とともに,トラウマになっている記憶を思い出すと,なぜかその記憶との間に心理的な距離が取れるようになる。すると苦痛が薄れ,同時に自己の評価が向上するという。 「お母さん」である里親女性は,こう話してくれた。「自分と同じ痛みを持った仲間だっていう思いが,子どもたちのなかにすごくあるの。同時に,私がなぜ里親をやっているかっていう思いもちゃんと伝わっているの。男女,年令に関係なく。男女,年齢に関係なく。あの子たち,本当にすごいよ。6歳の子だって,3歳の子に何かあったら率先して手伝おうとするの。これが,多人数養育の素晴らしさだと思う。仲間って大事だよね。心強いことだよね。 (続きを読む
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    masudakotaroさん
    masudakotaro さん(2014/12/23 作成)
  • 【第2章 雅人】 この「愛着障害」こそ,被虐待児のほとんどが抱えている問題といっていい。虐待を受けた子どもの「その後」に向きあう中,必ずと言っていいほど直面せざるを得ない問題だった。 (愛着とは)心理学的には,幼児期までの間に子どもと養育する側との間に作られる,母子関係を中心とした情緒的な結びつきを指す。 赤ちゃんにとって,世界は恐怖に満ちているのだ。戻ることのできるお母さんの膝がきちんとあることを確信し,安心感をしっかりもらった赤ちゃんは次第に,お母さんと離れて一人でいても平気になってくる。不安に駆られたとしても,お母さんをイメージするだけで不安を払拭できるから。この赤ちゃんは,お母さんとの間に「愛着」という関係を作ることができたのだ。こうして人は自分の世界を広げていく。これが,すなわち成長だ。 赤ちゃんが獲得した「愛着関係」こそ,対人関係の基本となり,自分をコントロールするもととなる。人を信じ,自分を信じ,世界を信じ,成長していく全ての基盤となるのが「愛着」なのだ。 愛着とは,愛され,守られ,大切にされた記憶。いつでも戻れるあたたかなお母さんの膝があり,守られてきたことにより,自分を信じ,他人を信じることができるのだ。 ゆえに愛着が育っていない子は,往々にしてスキンシップをすることができない。その子にとって「触られる」ということは,即,攻撃になってしまう。後ろから肩を叩かれただけで,瞬時にその人に殴りかかることも少なくない。触れられたことが,叩かれたことをフラッシュバックさせてしまうのだ。 アルコールの問題がある父のもとで暴力に怯えて育った娘が,「絶対,父親のような男とは結婚しない」と心に誓っているのに,同じような男性と一緒になり,DV被害を受け,さらに自分の子どもを殴るという・・・。彼女が獲得した生きる基盤=愛着は,それ以外なかったから。アルコール臭い息や飲んで暴れる父こそ「馴染みの世界」であり,それ以外の対人関係の有りようや感覚を,彼女は何一つ知らないまま大人になったのだ。 (ADHD=注意欠陥多動性障害の子どもの治療について)その子の生きにくさを改善することが目的であり,「扱いやすい子」にすることが目的ではない。 「愛着障害」による症状とADHDの特徴が重なってくることに気づく。たとえば「愛着障害」の特徴である「多動」「衝動や欲求不満に自制がきかない」「忍耐力や集中力が低く,学習障害が起きることもある」などはそのまま,ADHDの子どもの特徴だ。 なぜ,被虐待児に発達障害の子が多いのか。それは養育者が,発達障害を持つ子どもに対して育てにくさや非社会的な特徴を感じ,それを「しつけ」によって正そうとした時に,あっという間に虐待へと横滑りしてしまうという傾向があるからだ。 何よりも驚いたのは,虐待は脳全体の成長に物理的に影響を及ぼすということだ。それが脳画像診断によって明確に確認されると聞いた時には,耳を疑った。 子どもへの虐待そのものが,子どもの脳に器質的な変化を与え,広範な育ちの障害をもたらし,発達障害と言わざるを得ない状態を作り出す。 (続きを読む
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    masudakotaroさん
    masudakotaro さん(2014/12/23 作成)
  • 【第3章 拓海】 2013年10月1日時点で,対象児童焼く4万7千人のうち,児童養護施設で約2万9千人,乳児院に約3千人,情緒障害児短期治療施設などのその他の施設に約9千人と,約9割が「施設養護」の場で暮らしているのだ。 小学4年生で,自分の将来への足がかりとなるイメージ一つ,その欠片すら描けない。それはただ「生きてきた」「生かされてきた」だけと言わざるを得ないのではないか。 児童相談所に「この子には知的に遅れがある」と子どもを連れて行き知能検査を行い,診断書を児童相談所や社会福祉事務所などに提出すれば,手帳(療育手帳)は交付される。ではなぜ,知的に問題のない子どもにそのような診断が下りるのか。それは検査そのものに問題がある(からだ)。「施設での暮らしで,いろんなことを投げ出しているような子どもたちだから,心理士が『これ,やれる?』と言っても,まず『そんなもん,やれない』となる。知能検査も一般常識を問うものが多くて,たとえば文房具の中に鏡を入れて,『どれが仲間外れ?』と聞かれたとする。でも,彼らは小学校に上がるまで自分の文房具を持たせてもらってないから,わからない。あるいは『テニスのラケットはどれ?』と聞かれても,彼らはそんなもの,見たことがない」 ある男性職員は,児童養護施設はこんな場所でありたいと話す。「僕が実家に帰るのと同じように,嫌なことがあってもここに帰ってくれば安心なんだ,と感じとれる場所にしてあげたい。人に頼れる,人が裏切らない,人が自分の味方になってくれることを体験できる場所でありたい」 「彼の学習が遅れているのは,彼のせいではありません。今までの環境がそうさせているのです。彼にそうさせてしまった社会に,私たちはいます」 (続きを読む
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    masudakotaroさん
    masudakotaro さん(2014/12/23 作成)
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