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『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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【第2章 雅人】
この「愛着障害」こそ,被虐待児のほとんどが抱えている問題といっていい。虐待を受けた子どもの「その後」に向きあう中,必ずと言っていいほど直面せざるを得ない問題だった。

(愛着とは)心理学的には,幼児期までの間に子どもと養育する側との間に作られる,母子関係を中心とした情緒的な結びつきを指す。

赤ちゃんにとって,世界は恐怖に満ちているのだ。戻ることのできるお母さんの膝がきちんとあることを確信し,安心感をしっかりもらった赤ちゃんは次第に,お母さんと離れて一人でいても平気になってくる。不安に駆られたとしても,お母さんをイメージするだけで不安を払拭できるから。この赤ちゃんは,お母さんとの間に「愛着」という関係を作ることができたのだ。こうして人は自分の世界を広げていく。これが,すなわち成長だ。

赤ちゃんが獲得した「愛着関係」こそ,対人関係の基本となり,自分をコントロールするもととなる。人を信じ,自分を信じ,世界を信じ,成長していく全ての基盤となるのが「愛着」なのだ。

愛着とは,愛され,守られ,大切にされた記憶。いつでも戻れるあたたかなお母さんの膝があり,守られてきたことにより,自分を信じ,他人を信じることができるのだ。

ゆえに愛着が育っていない子は,往々にしてスキンシップをすることができない。その子にとって「触られる」ということは,即,攻撃になってしまう。後ろから肩を叩かれただけで,瞬時にその人に殴りかかることも少なくない。触れられたことが,叩かれたことをフラッシュバックさせてしまうのだ。

アルコールの問題がある父のもとで暴力に怯えて育った娘が,「絶対,父親のような男とは結婚しない」と心に誓っているのに,同じような男性と一緒になり,DV被害を受け,さらに自分の子どもを殴るという・・・。彼女が獲得した生きる基盤=愛着は,それ以外なかったから。アルコール臭い息や飲んで暴れる父こそ「馴染みの世界」であり,それ以外の対人関係の有りようや感覚を,彼女は何一つ知らないまま大人になったのだ。

(ADHD=注意欠陥多動性障害の子どもの治療について)その子の生きにくさを改善することが目的であり,「扱いやすい子」にすることが目的ではない。

「愛着障害」による症状とADHDの特徴が重なってくることに気づく。たとえば「愛着障害」の特徴である「多動」「衝動や欲求不満に自制がきかない」「忍耐力や集中力が低く,学習障害が起きることもある」などはそのまま,ADHDの子どもの特徴だ。

なぜ,被虐待児に発達障害の子が多いのか。それは養育者が,発達障害を持つ子どもに対して育てにくさや非社会的な特徴を感じ,それを「しつけ」によって正そうとした時に,あっという間に虐待へと横滑りしてしまうという傾向があるからだ。

何よりも驚いたのは,虐待は脳全体の成長に物理的に影響を及ぼすということだ。それが脳画像診断によって明確に確認されると聞いた時には,耳を疑った。

子どもへの虐待そのものが,子どもの脳に器質的な変化を与え,広範な育ちの障害をもたらし,発達障害と言わざるを得ない状態を作り出す。

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