『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』の読書ノートリスト
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- 【第4章 明日香】 2008年2月1日時点の「児童養護施設入所児童等調査結果(厚生労働省)によれば,入所理由で最も多いのが,「母の精神疾患等」で18.9%。注目すべきは「両親の放任・怠惰」や「両親の虐待・酷使」「棄自」など虐待にあたる理由で,これらを含めれば27.3%と最大の入所理由となる。 彩加ちゃんは病院の待合室で目が合った人には誰でもべたべたとくっついて,その人のバッグを開けて中身を片っ端から出していくという行為も繰り返したという。人との距離感が取れないのは愛着障害の典型的な行動であり,また,施設には「これは誰かのモノ」という私物の概念がないための行動だ。 「『おいしいね』って私たちが食べるところを見せないと,子どもは大人が“食べる”ということがわからないのです」 一般に「親の,子への愛は無償だ」と言われるが,虐待を見ていく限り,それは逆だとしか思えない。子の,親への愛こそが無償なのだ。 【第5章 沙織】 厚生労働省から発表される,児童相談所における「相談種別対応件数」(2010年度版)の割合においても,「身体的虐待」が38.3%,「ネグレクト」が32.7%,「心理的虐待」が26.5%に対し,「性的虐待」は2.4%と非常に低いものとなっている。性的虐待の相談件数が全体の3%前後というのは,年によって相変化はない。 この数字が実態とかけ離れていると,臨床現場からの指摘がある。 「あいち小児保健医療総合センター」において,2001年11月から2011年10月までの期間に,虐待で治療を行った患者数は1110名。そのうち性的虐待を受けていたのは男性56名,女性132名の計188名で,全体の役17%にも上っている。 あいち小児の新井康祥医師は,性的虐待の被害者を治療してきた経験からこう語る。「トラウマを抱える被害者全般に言えることですが,本人はまるで悪くないにもかかわらず,自分を責めたり,自己評価が低かったりします。だから,虐待の件について,『それは,お父さんが悪いと思うよ』と伝えても,『えっ,そうなの?』と言ってくれればまだましで,しばらく治療してからも,『自分が悪かったから仕方がない』とか,『お父さんのおかげで生活できているから』『お母さんにあまり迷惑をかけられない』と話す子も多いので,とても根が深い問題だと思います」 あいち小児でカルテを作った親の実に63%が性的虐待の被害があり,解離性同一性障害という診断名がついたケースでは42%にも及んでいる。 トラウマ治療である「EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing=眼球運動による脱感作と再処理法):患者の目の前に指を二本立てて左右に振り,患者が目でその指を追い眼球を動かすという眼球運動を主な特徴とする治療法だ。眼球運動とともに,トラウマになっている記憶を思い出すと,なぜかその記憶との間に心理的な距離が取れるようになる。すると苦痛が薄れ,同時に自己の評価が向上するという。 「お母さん」である里親女性は,こう話してくれた。「自分と同じ痛みを持った仲間だっていう思いが,子どもたちのなかにすごくあるの。同時に,私がなぜ里親をやっているかっていう思いもちゃんと伝わっているの。男女,年令に関係なく。男女,年齢に関係なく。あの子たち,本当にすごいよ。6歳の子だって,3歳の子に何かあったら率先して手伝おうとするの。これが,多人数養育の素晴らしさだと思う。仲間って大事だよね。心強いことだよね。 (続きを読む)
masudakotaro さん(2014/12/23 作成)