新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)』の読書ノート作成者:pigeon さん
『2012/10/23 作成
やがて昼どきになったから、めしが出た。懲役場の囚人の食うめしで、なるほど旧幕時代よりはだいぶましであった。麦六割、米四割で、野菜、干魚がついている。
万吉も食った。
「これなら、監獄も悪い所やおまへんな」
「なんの」
原田典獄はいった。
「これは規定のめしでござって、囚人がこれを食っているわけではない。ここにもわしの悲憤がある」
現実には予算不足で、米のかわりに稗が入っている。稗は犬猫も食わぬというから、囚人の体力を保持する上に多々問題がある、と原田はいった。
(こいつ、泣き屋やな)
と、万吉は思った。原田は理想主義者ながら、現実は泣いているばかりでよほど実行力のない男なのだろう。
万吉も食った。
「これなら、監獄も悪い所やおまへんな」
「なんの」
原田典獄はいった。
「これは規定のめしでござって、囚人がこれを食っているわけではない。ここにもわしの悲憤がある」
現実には予算不足で、米のかわりに稗が入っている。稗は犬猫も食わぬというから、囚人の体力を保持する上に多々問題がある、と原田はいった。
(こいつ、泣き屋やな)
と、万吉は思った。原田は理想主義者ながら、現実は泣いているばかりでよほど実行力のない男なのだろう。
pigeon さん
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