Paragrase “パラグレーズ” ロゴ

【読書家のための蔵書管理&読書ノート作成サービス】 Paragrase “パラグレーズ”

pigeon さんのプロフィール

pigeon さん
男性  神奈川県  会社員・自営業
  • 全 7 件
  • 並び替え: 新着順 / 人気順
  • 新装版 俄(上) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    普通、江戸や諸国の城下町というのは、武家と町人の人口がほぼ半々ぐらいにいっている。その点、大坂は例外的に武家の人口の少ない土地で、いわば町人一階級で町を構成しているようなものだ。自然、上への畏れというものを知らず、階級的な身分意識が希薄で、言語動作に丁重さが欠け、身分的節度がなく、そういう意味での人としての封建的美しさがない。(続きを読む
    2,647 Views
    2012/11/24 作成
  • 古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)
    たしかな、いや熱狂的な信念につらぬかれたこの人を除いて、一体だれが、長年にわたるああいう大事業を企て、私財からああも莫大な資金を投じ、果てしなく積み重なっているように見える廃墟の層を掘りぬいて、はるか下に横たわる原地盤に到達したであろうか。もしも空想力にスコップが動かされなかったら、焼けた町は今日なお地中深く埋もれているであろう(続きを読む
    2,367 Views
    2012/10/23 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
     やがて昼どきになったから、めしが出た。懲役場の囚人の食うめしで、なるほど旧幕時代よりはだいぶましであった。麦六割、米四割で、野菜、干魚がついている。  万吉も食った。 「これなら、監獄も悪い所やおまへんな」 「なんの」  原田典獄はいった。 「これは規定のめしでござって、囚人がこれを食っているわけではない。ここにもわしの悲憤がある」  現実には予算不足で、米のかわりに稗が入っている。稗は犬猫も食わぬというから、囚人の体力を保持する上に多々問題がある、と原田はいった。 (こいつ、泣き屋やな)  と、万吉は思った。原田は理想主義者ながら、現実は泣いているばかりでよほど実行力のない男なのだろう。(続きを読む
    2,435 Views
    2012/10/23 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    「明石屋ではないか」  と、馬上の士が、声をかけた。  万吉がふりむくと、官軍の高級士官らしい人物で、長州軍制服の上に錦の陣羽織をはおっている。 「おれだ、わすれたか」 「はて」  万吉はとぼけた。このあたりが、万吉の侠客としての腹芸のひとつであろう。 「わすれてもらってはこまる。おまえに命をたすけられた長州の遠藤謹助だ」 (ああ、理屈屋の遠藤か)  むろん、万吉は馬上の士を見たとたんに思い出しているのだが、そういう顔つきをすれば万吉の男稼業がすたるであろう。 「一向に存じまへんな」 「よく顔をみろ」  と、遠藤は馬から降り、韮山笠をとって万吉に笑いかけた。 「ああ、思いだしました」 「あっははは、物おぼえのわるいやつだ。ーーところで」  と、遠藤は万吉と、万吉をとりかこんでいる松時雨らを見くらべつつ、 「ここでなにをしている」 「首」  自分の首に手をやり、 「これだす」  と、刎ねるまねをした。 「ははあ、時勢だな」  遠藤は笑いだした。以前は自分がいまの万吉の立場にあったことを思うと、時勢の変転というのはまるで芝居の回り舞台のようである。 「ほな、失礼」  と万吉が河原へおりかけると、遠藤はあわてて、待てーーといった。 「おまえを処刑すれば、長州の恥辱だ。なぜわれわれを救ったことを、この屯営の連中に言わぬ」 「わすれましたのでな」  万吉はもう芝居がかっている。 「わすれたわけでもあるまい」 「たとえ覚えていても、この場になって昔の恩を担保(かた)に命乞いをしようとは思いまへん」 「申したなあ。それでこそ任侠だ」  遠藤は万吉の縄をとかせ、あらためて屯営へ連れてゆき、座敷にあげ、この寺の小僧に命じて茶菓の接待をさせた。(続きを読む
    2,444 Views
    2012/10/16 作成
  • プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-3))

    プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-3))

    レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 文学・評論

    「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(続きを読む
    2,358 Views
    2012/10/14 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    「そうか、斬るか」  万吉は、ひとごとのようにうなずいた。 「ほなら、すぱっとやって貰オか」 「馬鹿に手軽だな」  斬る側の大石鍬次郎のほうが驚いた。いままでこんな奴にめぐりあったことがない。 「斬られるのは、おぬしだぜ」 「念を押すなよ、気味の悪い」 「押す気にもなる。明石屋、いったいおぬしの心ノ臓はどこについているのだ」 「ここや」  万吉はコブシを宙にあげて空気を掴んだ。 「コブシについているのか」 「いや、ここや」  また、ぱっと虚空をつかんだ。 「どこだ」 「ここや」  ぱっとつかむ。 「わからんな」 「虚空にある」 と、万吉はうれしそうにいった。禅問答のようだが、やがて大石は了解した。万吉のいのちは体内にはなく常に虚空にある、という意味であろう。生命などは空だ、と万吉は言いたいにちがいない。 (P.138)(続きを読む
    2,373 Views
    2012/10/13 作成
  • キーワードで引用ノートを探す
    Copyright © 2024 Culturelife Inc. All Rights Reserved.