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pigeon さんのプロフィール

pigeon さん
男性  神奈川県  会社員・自営業
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  • プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-3))

    プレイバック (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-3))

    レイモンド・チャンドラー / 早川書房 / 文学・評論

    「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(続きを読む
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    2012/10/14 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    「明石屋ではないか」  と、馬上の士が、声をかけた。  万吉がふりむくと、官軍の高級士官らしい人物で、長州軍制服の上に錦の陣羽織をはおっている。 「おれだ、わすれたか」 「はて」  万吉はとぼけた。このあたりが、万吉の侠客としての腹芸のひとつであろう。 「わすれてもらってはこまる。おまえに命をたすけられた長州の遠藤謹助だ」 (ああ、理屈屋の遠藤か)  むろん、万吉は馬上の士を見たとたんに思い出しているのだが、そういう顔つきをすれば万吉の男稼業がすたるであろう。 「一向に存じまへんな」 「よく顔をみろ」  と、遠藤は馬から降り、韮山笠をとって万吉に笑いかけた。 「ああ、思いだしました」 「あっははは、物おぼえのわるいやつだ。ーーところで」  と、遠藤は万吉と、万吉をとりかこんでいる松時雨らを見くらべつつ、 「ここでなにをしている」 「首」  自分の首に手をやり、 「これだす」  と、刎ねるまねをした。 「ははあ、時勢だな」  遠藤は笑いだした。以前は自分がいまの万吉の立場にあったことを思うと、時勢の変転というのはまるで芝居の回り舞台のようである。 「ほな、失礼」  と万吉が河原へおりかけると、遠藤はあわてて、待てーーといった。 「おまえを処刑すれば、長州の恥辱だ。なぜわれわれを救ったことを、この屯営の連中に言わぬ」 「わすれましたのでな」  万吉はもう芝居がかっている。 「わすれたわけでもあるまい」 「たとえ覚えていても、この場になって昔の恩を担保(かた)に命乞いをしようとは思いまへん」 「申したなあ。それでこそ任侠だ」  遠藤は万吉の縄をとかせ、あらためて屯営へ連れてゆき、座敷にあげ、この寺の小僧に命じて茶菓の接待をさせた。(続きを読む
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    2012/10/16 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
     やがて昼どきになったから、めしが出た。懲役場の囚人の食うめしで、なるほど旧幕時代よりはだいぶましであった。麦六割、米四割で、野菜、干魚がついている。  万吉も食った。 「これなら、監獄も悪い所やおまへんな」 「なんの」  原田典獄はいった。 「これは規定のめしでござって、囚人がこれを食っているわけではない。ここにもわしの悲憤がある」  現実には予算不足で、米のかわりに稗が入っている。稗は犬猫も食わぬというから、囚人の体力を保持する上に多々問題がある、と原田はいった。 (こいつ、泣き屋やな)  と、万吉は思った。原田は理想主義者ながら、現実は泣いているばかりでよほど実行力のない男なのだろう。(続きを読む
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    2012/10/23 作成
  • 古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)
    たしかな、いや熱狂的な信念につらぬかれたこの人を除いて、一体だれが、長年にわたるああいう大事業を企て、私財からああも莫大な資金を投じ、果てしなく積み重なっているように見える廃墟の層を掘りぬいて、はるか下に横たわる原地盤に到達したであろうか。もしも空想力にスコップが動かされなかったら、焼けた町は今日なお地中深く埋もれているであろう(続きを読む
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    2012/10/23 作成
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    「そうか、斬るか」  万吉は、ひとごとのようにうなずいた。 「ほなら、すぱっとやって貰オか」 「馬鹿に手軽だな」  斬る側の大石鍬次郎のほうが驚いた。いままでこんな奴にめぐりあったことがない。 「斬られるのは、おぬしだぜ」 「念を押すなよ、気味の悪い」 「押す気にもなる。明石屋、いったいおぬしの心ノ臓はどこについているのだ」 「ここや」  万吉はコブシを宙にあげて空気を掴んだ。 「コブシについているのか」 「いや、ここや」  また、ぱっと虚空をつかんだ。 「どこだ」 「ここや」  ぱっとつかむ。 「わからんな」 「虚空にある」 と、万吉はうれしそうにいった。禅問答のようだが、やがて大石は了解した。万吉のいのちは体内にはなく常に虚空にある、という意味であろう。生命などは空だ、と万吉は言いたいにちがいない。 (P.138)(続きを読む
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    2012/10/13 作成
  • 新装版 俄(上) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
     その夜、万吉はいったん帰宅し、なにごともわすれて眠った。 「夜はものを考えぬ」  というのが、万吉の処世術である。深夜ものを考えると来し方行くすえのことがあたまのなかに去来し、考えることが自然萎れてきて消極的になるからだ。(続きを読む
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    2012/11/24 作成
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