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『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公…』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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【第五講 忘れたが覚えている】
潜在的な記憶:被験者はある課題を遂行することによって,特定の知識を持っていることを示せる。がしかし,その知識を持っていることに自ら(意識的に)気づくことはなく,またその知識に意図的・自覚的にアクセスすることもできない。

エビングハウスは被験者に無意味つづりの単なるリストを暗記させた。また別の実験では対連合学習をさせている。ひとつのつづりと別のつづりとの対応関係を覚える,つまり単語帳の暗記に似た学習だ。その後,彼は三通りの異なった方法で記憶の存在を示した。
1.再生:単純にリストの中にあったつづりを自由に想起できること。
2.再認:自発的には思い出せないが,目の前に示されたり,読み上げられたりすれば,リストの中にあったと判断できる場合。
3.節約法:再生も再認もできないつづりであっても,忘却の後にもういちど学習させると,はじめてのときよりも早く基準に達する,つまり学習の効率が良い。

忘却したと思っても,また事実再生・再認ができなくても,完全に忘却したわけではない。

潜在的な記憶過程が顕在的な記憶過程の根元に存在している。

健忘症:脳損傷に由来する記憶障害の総称。
1.順行性健忘:患者は新しい材料や出来事を記憶できない。ひどい場合には,障害が生じた時点(たとえば脳に出血が生じた時点)から死ぬまで一切の事件を記憶できない。
2.逆行性健忘:障害が生じた時点より以前の出来事を想起できなくなる。しかも,古い事件は比較的よく想起できるのに,新しい事件ほど想起が困難。

記憶についての「多元システム」説:障害を受けやすい記憶と受けにくい記憶がある。

宣言記憶:事柄の知識。意識的な想起が可能な記憶。内容について述べることができる。主に学習によって獲得された事実やデータに関する記憶で,健忘症では強い障害を示す。

手続記憶:やり方の知識のようなもので,特定の事実やデータ,特定の時間に特定の場所で生じた出来事とは関係がなく,学習された技能や認知的操作の変容に関わる記憶。健忘症でも傷害されずに残る。

健忘症でも損なわれない記憶には,少し違う種類もあって,プライミング(呼び水)効果という。いちどでもちらりと見たものは二度目には見やすくなる,あるいは反応が早まったり強まったりするといった効果。

プライミングを使うと,健常者でも潜在記憶の証拠が出てくることがある。再生や再認のまったくダメな健忘症の患者でも,プライミングでは優秀な成績を示す。

さまざまな手続記憶で共通しているのは,これらの技能の獲得時期が,逆行性健忘の期間内であっても――つまり発症直前であっても――失われずに残ること。

宣言的記憶と手続的記憶は,①貯蔵される情報の種類,②情報の用いられ方,③関与する神経組織の三つの点で違っている。

ダルウィンによれば「エピソード記憶」は損なわれるが,「意味記憶」(の一部)は損なわれない。

エピソード記憶とは,個人的体験のいわば日記的・自伝的な記憶のことで,日時と場所つきで明確に想起可能なエピソードの記憶表象。

意味記憶とは,世間一般でいう知識――事実や概念。

意味記憶は保存されるが,エピソード記憶が損なわれた例。
1.チェスのルールはちゃんと覚えていて言えるのに,どこで習い覚えたかさっぱり記憶にない。
2.ある会社や業界用語などについて詳しく知っているのだが,それは自分がかつてその会社にいたからだということが分からない。

エピソード記憶も意味記憶もともに顕在的であり,宣言的記憶のサブシステムと見られている。
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