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『別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判』の読書ノート作成者:masudakotaro さん

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【5 仕事のように続く犯罪】
弁護側とのやり取りで浮かび上がってきたのは,木嶋の驚くべき反社会性だった。

「上京した翌年の平成六年一月,東京家庭裁判所で審判を受け」,「窃盗,その他の罪名で保護観察の処分を受け」ている。「記録によれば,当時交際していた男性に指示され」,「知り合いの家から,預金通帳と印鑑を持ち出してしまった」という事件。被害額は「七,八百万ぐらい」になる。

このあとの弁護士の質問に木嶋は,窃盗を指示したのはミヤザキさんという四十代の男性で,初めて性交渉をしたのもこの男性だったという証言をしている。

この裁判ですっかり有名になった木嶋の「名器発言」は,このとき出たものである。木嶋がそんな臆面もない発言をしたとき,右陪席の女性裁判官が思わず顔を歪めた。彼女は東大卒のまだ二十八歳の判事補で,容姿においても木嶋とは対照的なほっそりとした美人である。

「う~ん,具体的にはテクニックというよりも,本来持っている機能が,ふつうの人より高いということをほめてくださる方が多かったですね」

木嶋が平成十四(2002)年二十六歳のとき,前述の福山定男が経営する千葉県松戸市内のリサイクルショップで働くまでの,木嶋の犯罪歴。
平成十一(1999)年一月 化粧品を万引きして目黒署に検挙。
平成十二(2000)年三月 本を万引きして(埼玉県)新座署に検挙。
平成十三(2001)年五月 銀行のATMで現金を窃盗して高島平署に検挙。
平成十五(2003)年三月 詐欺罪で逮捕(同年六月に懲役二年六月,執行猶予五年の判決)。
上記最後のネットオークションにからんだ詐欺事件について。「ここには木嶋の生来の虚言癖がはっきりと表れている」。「木嶋はまた悪い空想癖が働いて,安達学美という架空の女性に,罪をなすりつけている」。

木嶋はウソをつくことも,人をだますこともまったく悪いと思っていない。

寺田さんは不能だったので,アダルトグッズを持ち出してきた。これほど死者を冒涜した話は聞いたことがない。木嶋は他者との関係をカネとセックスでしか見ていない。

検察側の被告人尋問。
――あなたは風俗に行くような男性は嫌いだと大出さんに言ったということですが,でもあなたは風俗で働いていた。
「風俗?」
――愛人関係というのは,風俗じゃないんですか?
息づまる質疑応答のあと,検察官は声音を急に哀訴調に変えて,「我々はあなたを陥れようとか喧嘩しようとしているわけではないのは分かりますよね?この気持ちは伝わっていますか?」と言った。これに対して,木嶋はこう答えた。
「いいえ」
これまでの鈴を転がすような綺麗な響きとは打って変わって,地の底から響くような凄みのある声だった。
検察官の被告人質問の中で,木嶋が位置とだけ笑ったことがある。検察官が「なぜ,笑ったんですか,被告人?」と尋ねると,木嶋はこともなげに「あなたが常に恫喝的だからです」と言ってのけた。
――私はそんなに恫喝的ですか?
「はい」
傍聴席から失笑が漏れた。この質疑応答に関しては,完全に木嶋の勝ちだった。木嶋はおそらく,この検察官の前歴を知っている。だからこそ,ふだんあまり使わない「恫喝的」という言葉が木嶋の口から出た。この検察官は京大の出身で,学生時代から「瞬間湯沸かし器のようなところがあった」(そう急性)という。その話を聞いて,検察官がこの法廷でエキセントリックな質問を乱発している理由がわかった。神戸地検の特別刑事部時代,大阪地検特捜部の証拠改竄事件で一審有罪判決を言い渡された大坪弘道被告に目をかけられ,大坪が大阪地検特捜部の部長に就任すると,大阪地検特捜部に異動となり,厚生労働省元局長の木村厚子が逮捕されるきっかけになった郵便不正事件を担当した。そしてこの事件の被告に対し,机をどんどん叩き,「懲役十五年にするぞ」「息子も逮捕するぞ」などと強迫的な取り調べをして問題となり,大阪地検特捜部からさいたま地検に左遷された。
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