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『麦ふみクーツェ (新潮文庫)』からの引用(抜き書き)読書ノート

引用(抜き書き)麦ふみクーツェ (新潮文庫)』の読書ノート作成者:dotetintin さん

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ネタバレ注意!
先生がおもいだしたかのように、
「へんてこで、よわいやつはさ。けっきょくんとこ、ひとりなんだ」
 と口の端からつぶやいた。「ひとりで生きてくためにさ、へんてこは、それぞれじぶんのわざをみがかなきゃなんない」
「技?」
 とん、たたん
「わざだよ」
 先生はこたえた。「そのわざのせいで、よけいめだっちゃって、いっそうひどいめにあうかもしんないよ。でもさ、それがわかっててもさ、へんてこは、わざをさ、みがかないわけにはいかないんだよ。なあ、なんでだか、ねこ、おまえわかるか」
「それは」
 たたん、とん
 ぼくは足ぶみのようにひとことずつ区切っていった。「それがつまり、へんてこさに誇りをもっていられる、たったひとつの方法だから」
「へえ」
 と先生は口をとがらせ、「ねこのくせに、よくわかってやんの」
「ねえ先生」
 とぼくは言う。「みどり色は何十万にひとりなんかじゃない。この世でたったひとりなんだ。ねえ、ひとりってつまり、そういうことでしょう?」
 先生はなにもいわなかった。こたえをかえすかわり、鏡なし亭につくまでのあいだクッションのきいた座席の上で、ずっとぴょんぴょこ跳びはねていた。
MEMO:
「へんてこさに誇りをもてる唯一の方法」より。
この作品で一番心に響いたやりとり。
周りとうまくやれない自分の中にも希望が見いだせた。
ねこが即答したことにも大きな意味があると思う。学校に通っていたころのねこだったら、自分のへんてこさを誇るなんて発想はこんなにすんなり持てなかったんじゃないだろうか。
そこのところが、さまざまな「へんてこ」との出会いを通じて変化していき、最終的にねこは自分のへんてこさ(母譲りの巨大なからだ、みどり色とむらさきみどりを救えたねこの鳴きまね)に誇りを持てるようになる。
さん
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