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『指先からソーダ (河出文庫)』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『指先からソーダ (河出文庫)』の読書ノートリスト

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  •  私のコンタクトレンズは特別製で、恋の終わりが見える。  向かい合って座ると、相手との恋がいつ終わるのかが、わかる。右上の方でチカチカして教えてくれる。  今、向かい合っている男の人とは、「あと、二カ月」と表示されている。  私は、アイスコーヒーを乗り越えて腕を伸ばし、その人の肩に付いている、サクラの花びらを取ってあげる。ありがとう、とその人は言って、もう何も付いてない? と、背中も見せてくれる。大丈夫、と私が笑うと、 「夏になったら、カキ氷を食べようよ」  その人は、急に関係ないことを言う。 「うん、ベロを見せ合う?」 「見せ合うよ。緑の」 「メロン味か」 「そう」(続きを読む
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itokoさん
itoko さん(2012/11/24 作成)
  •  年齢を重ねていくと、あきらめることが増えていく。それがとても楽しい。  私は、あきらめるのが大好きだ。様々なことをあきらめていく。  二十代も後半になれば、体力は、十代の頃とは、違ってくる。徹夜するのが、つらくなる。しかしあきらめて、この体力で生きていくのだ。  身の上に落ちてくる諦念という言葉を甘受したい。  失恋が好き。  あの人をあきらめられる。  失業が好き。  買い物をあきらめられる。 「あきらめる」の語源は、「明らかにする」だという。物事をはっきりさせる、というところから、意味が変化してきたのだ。(続きを読む
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    itokoさん
    itoko さん(2012/11/24 作成)
  •  でも……、正直なところ、好きな人に金を送る、という行為自体は、すごく楽しいことだった。  金を貸すというのが危うい行為だということは当時もわかっていて、その危なっかしい方法で恋人とコミュニケーションを取ることに、快感があった。  金というものを、人の心とは無関係な冷たいものだと考える向きもある。しかし、もし人に心がなかったなら、金は発明されなかっただろう。私は、金は素晴らしいツールだと思う。「この人と関わりたい」「この社会で生きていたい」という願いの下に、人は稼ぎ、消費し続ける。金のコミュニケーションは難しく、ときどき失敗するけれど、決して金を否定することなく、人間関係を築いていきたい。(続きを読む
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    itokoさん
    itoko さん(2012/11/24 作成)
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