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『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』の読書ノートリスト

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  • 青いビロードの中国風の椅子、そこにおまえはアンナを、神を冒涜するような卑猥なポーズで座らせていたね。ジャワ女の両脇、木製の肘掛では、おまえが創りだした二つのタヒチの偶像が、力強い異教徒の権威をもって西洋とその上品ぶったキリスト教をきっぱりと放棄しているかのように、反旗を翻していた。 ~象徴主義とそれらのイメージの精緻さを学びながら、おまえは今、直観的に察知していたものを、ついにはっきりと見えるようになったのだ。大勢の画家たちの命を奪った肺結核の影響もあるが、ヨーロッパ美術は脆弱になっており、ヨーロッパによっていまだ損なわれていない原始的文化ーーそこではまだ地上の楽園が存在しているーーに湯浴みして活力を取り戻すことだけが、それを退廃から救ってくれるのだ。 P112(続きを読む
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haruga6さん
haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • それで彼は、最後の自画像を描こうと決心した。それは落ちぶれて無為のまま、堕落し、士気喪失したマルキーズの人々の間で、彼らと同じように忘れられた世界の片隅で零落している自分自身の姿を、身をもって証すことだった。彼はイーゼルの横に鏡を置いて、衰えた瞳がようやく捉えた、今にも消えてしまいそうに霞んだその像をキャンヴァスに描き取ろうとして、二週間以上作業をした。間近に迫る避けようもない自分の最期を、屈辱的な眼鏡の奥で視線にその分別をたたえながら静かに見つめている、ぐったりしているがまだ死んでいない男。その視線の中で、冒険や狂気、探究、敗北、闘争に満ちた激しい人生が語られていた。一つの生命には必ず終わりが来るものだよ、ポール。白い短髪に痩せた体躯、そして平然たる大胆さをもって最後の攻撃を待っている。おまえは確信してはいなかったが、たくさん描いてきた自画像ーーブルターニュの農民の姿で、ツボの曲面に描かれたペルーのインカ人の姿で、ジャン・ヴァルジャンになぞらえて、オリーヴ園のキリスト教のように、ボヘミアンとして、あるいはロマンティックな人物像としてーーの中でこれが、別れの、人生の終局を目前にした芸術家の自画像が、もっとも自分を現していると直観的に感じてきた。 P334(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 今でもそうだろう、コケ。近年おまえが発言したり、文字に表してきた芸術上の問題に関する無数の肯定・否定の背後にある、動かせない核心はいつも同じだった。西洋美術は原始芸術の中にある生活の総合体から分離することによって衰退してしまった。原始芸術では、美術は宗教とは切り離すことはできず、食べることや飾ること、歌うこと、セックスをすることと同様に、日常生活の一部を形成している。おまえは作品にこの伝統を復活させたかった。 P422(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • ここのところの性的興奮に彼は苦しんでいた。彼は「姦淫すること」(ルーテル派の元説教師はこの言葉を使っていた)に用いるエネルギーは、芸術家としての仕事に向かうエネルギーを減少させていると思い込んでいた。元牧師の清教徒的偏見をポールはからかった。彼にとっては反対に、ペニスが満足していなければ、絵筆を取る勢いがまったくなかった。 「ちがう、ちがう」激昂しながら、狂ったオランダ人は言った。「俺の傑作はセックスを完全に絶っているとき描いたんだよ。精液で描いた作品だ。そのセックス・エネルギーを、女にじゃなくてキャンヴァスにぶちまけたんだよ」 「バカなこと言うなよ、フィンセント。それなら、俺には余りあるほどのセックス・エネルギーがあるってことじゃないか。絵にも女にも回せるだけのよ」 P326(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
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