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『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』の読書ノートリスト

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  • バルガス=リョサは、「小柄で黒髪に色白、スズメバチのような細いウエストをした、頭の回転が速いフローラの最大の魅力は、決して運が良いといえない人生の中で、自分の不幸を決して他人のせいにしたり嘆いたりせずに、頭をあげて逆境に立ち向かっていったところだ。その反逆心に満ちた強い性格、夢想や感受性のおかげで、めぐり合わせた人生の悲惨さを、自らの活動に着想を抱かせる素材へと昇華させていくことができた」と、スペインの新聞のインタビューで述べている。 P501(続きを読む
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haruga6さん
haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • バルガス=リョサの政治的思想を巡る180度の転換の背景として、キューバ革命の中で、平等の理念を実現していく過程で、同一化を巡るさまざまな問題が露呈されたことによって、彼は同一化を認めることはできない、多様性の中での共存こそ自由である、と考えるようになったこと、その一方でユートピア的な思想やラジカルな選択は避けるべきである、良識こそが政治的美徳の最良のものである、との彼の主張に、カミュやアイザイヤ・バーリンの思想の影響の存在が指摘されている。 P497(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • バルガス=リョサは十代でサルトルの作品に心酔し、他の多くのラテンアメリカの知識人同様、キューバ革命には当初から支持を表明してきた。だが1968年の旧ソ連によるチェコスロバキア侵略をカストロが支持したこと、それに続いて起こったエベルト・パディジャら五人の作家が自らの反革命活動を自己批判させられた「パディジャ事件」によって、キューバ革命政権と決別した。しかし、それでも当時は、資本主義と社会主義のうちどちらかを選ばねばならないとしたならば、歯を食いしばってでも社会主義と答えると、社会主義への支持を表明していた。それが、平等を志向するような社会よりも、たとえ、独裁的なものであれ自由な社会にはより多くの自由がある、との彼の発言が示しているように、現存の社会主義のあり方を否定する一方で、現代資本主義への批判的な観点を喪失してしまったような姿勢が、読者たちの戸惑いの原因だった。 P496(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 時々、マルキーズ諸島ではなく、日本にいる自分を彼は想像していた。おまえは月並みなポリネシアではなくて、あの国へ楽園を探しに行くべきだったのだよ、コケ。洗練された日出づる国では、人々は一年のうち九か月を農業に従事し、残りの三か月を芸術家として生きるという。日本人とはなんとまれなる民族だろうか。彼らのあいだでは、西洋芸術を退廃に追いやった芸術家とそれ以外の人々のあいだの悲劇的な隔たりはなかった。日本ではすべての人がいかなることにも従事できた。百姓であると同時に芸術家でもあり得た。芸術とは自然を真似るのではなく、技術を習得し、現実の世界とは異なる世界を創ることだった。日本の版画家たちよりうまくこれをやった者はいなかった。 P472~P473(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 熱い議論が飛び交う会議は夜遅くまで長引くこともあったが、フローラを困惑させたのは彼女が提案した大きなテーマーー老人や病人、事故にあった労働者のためのユニオン殿堂、すべての人が無料で受け取ることのできる教育、働く権利、国民の擁護などーーについて討論しないで、取るに足りないことや陳腐なこと、ばかばかしいことに時間を費やしていることだった。おさだまりのごとくある労働者が、あなたは本の中で「子供たちにパンを買うべき金を酒場に行って飲んで浪費してしまっている」と書いて労働者たちを批判していると、フローラを非難した。また、サン=マルタン通りに近いジャン=オーベールの袋小路にある屋根裏部屋での集会で、ロリーという名の大工が、フローラにふいに言い出した。「ブルジョワを前に労働者の悪癖を暴き立てるなんて、あなたはとんでもない裏切り行為を犯しましたよ」フローラはかれに答えた。偽善や嘘がいつもブルジョワの武器であるように、真実はプロレタリアの一番の武器であるべきだ、と。何と言われても言いたい人には言わせせておこう。悪癖は悪癖だし、粗野なことは粗野、と彼女は言い続けるだろう。 P455~P456(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 今でもそうだろう、コケ。近年おまえが発言したり、文字に表してきた芸術上の問題に関する無数の肯定・否定の背後にある、動かせない核心はいつも同じだった。西洋美術は原始芸術の中にある生活の総合体から分離することによって衰退してしまった。原始芸術では、美術は宗教とは切り離すことはできず、食べることや飾ること、歌うこと、セックスをすることと同様に、日常生活の一部を形成している。おまえは作品にこの伝統を復活させたかった。 P422(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • それでおまえは決心したのだ。もう別れる頃合だと。この共同生活はうまくいかないだろう。食卓の会話でそれとなく話題にするように努め、一緒に年越しをしようと予定していたが、もしかすると家族の都合で、年が明ける前にアルルを発つことになるかもしれないと触れて、おまえはそつなく別れの準備をはじめた。そのように取り繕わないほうがよかったのかもしれないね、ポール。オランダ人はおまえがすでに出ていく意思を固めていると気づいて、神経を高ぶらせ、ヒステリー状態になり、精神が不安定になった。愛する人に置き去りにされる絶望した愛人のようだった。目に涙をため、しゃがれた声で、年が終わるまで一緒にいてくれと哀願し、そうでなければ、取り返しのつかない被害を彼に与えでもしたかのように、恨みと憎しみをこめておまえを見つめながら、何日も口をきかなかった。おまえのことを、強くて闘士であると見込んでしがみつこうとしている、世間に対して無力で見捨てられたその人間に、おまえは限りない哀れみを感じた。けれども、そうでないときはおまえは憤慨していた。狂ったオランダ人の問題を負わされなくても、おまえにはもうすでに難題が有り余るほどあった。 P336-337(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • だからおまえはひまわりに囲まれているフィンセントを描いたのだ。その絵にはーーどのように見てもーーフィンセントが自分の絵に描きこんでいた生き生きした光はなかった。その反対に、どちらかといえばくすんでいて艶がなかった。その作品の中では、花も画家も輪郭をぼかしてぼんやりと周りに溶け込んでいた。しっかりと輪郭を描かれた人物というより、フィンセントはひとつの彫像で、耐えられないほど緊張してこわばっている剥製のようなマネキン人形で、今にも爆発しそうな火山男だった。とりわけ絵筆を握る硬直した右腕は、絵を描きつづけるためにしなければならない非人間的な努力を示していた。それらすべては、しかめた顔に、「俺は描いていはいない、自分を生贄にしているのだ」と言っているかのような、困惑気味の視線に集約されていた。フィンセントはその肖像画がまったく気に入らなかった。それをポールが見せると、フィンセントは青ざめて下唇を噛みしめ、不快なときに出てくるチック症状を見せながら、しばらく眺めていた、そして最後にこうつぶやいた。「そうだよ、これが俺だよ。でも狂っているね」 P335-336(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • その花々にはどこか神々しい天球の炎めいたものが感じられ、フィンセントがそうしたように、もし心をこめてじっと観察したならば、「光輪」が花々を取り巻いているのがわかった。彼はひまわりを描きながら、正真正銘のひまわりでありながら、トーチや大燭台でもあるように努力していた。 P335(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • その自画像を描いていて、アルルの「黄色い家」に雨と北西風に閉じ込められたあの数週間に、オランダ人を虜にした花、ひまわりを描くフィンセントの肖像画を描いたことをポールは思い出した。彼は飽きずにいつもその花を描いていた。 P335(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
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