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『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』からの引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)』の読書ノートリスト

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  • バルガス=リョサは、「小柄で黒髪に色白、スズメバチのような細いウエストをした、頭の回転が速いフローラの最大の魅力は、決して運が良いといえない人生の中で、自分の不幸を決して他人のせいにしたり嘆いたりせずに、頭をあげて逆境に立ち向かっていったところだ。その反逆心に満ちた強い性格、夢想や感受性のおかげで、めぐり合わせた人生の悲惨さを、自らの活動に着想を抱かせる素材へと昇華させていくことができた」と、スペインの新聞のインタビューで述べている。 P501(続きを読む
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haruga6さん
haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • バルガス=リョサの政治的思想を巡る180度の転換の背景として、キューバ革命の中で、平等の理念を実現していく過程で、同一化を巡るさまざまな問題が露呈されたことによって、彼は同一化を認めることはできない、多様性の中での共存こそ自由である、と考えるようになったこと、その一方でユートピア的な思想やラジカルな選択は避けるべきである、良識こそが政治的美徳の最良のものである、との彼の主張に、カミュやアイザイヤ・バーリンの思想の影響の存在が指摘されている。 P497(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 「黄色い家」では最初からすべてがうまくいかなかった。まず、ポールは散らかっているのを我慢できなかったが、フィンセントにとってそれは当たり前の状態だった。二人は仕事もきっちり分担した。ポールが料理をし、オランダ人が買い物をした。掃除についてはある日一方が掃除をしたら、次の日は他方が行った。本当のところは、ポールが片付けて、フィンセントが散らかした。 P325(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 時々、マルキーズ諸島ではなく、日本にいる自分を彼は想像していた。おまえは月並みなポリネシアではなくて、あの国へ楽園を探しに行くべきだったのだよ、コケ。洗練された日出づる国では、人々は一年のうち九か月を農業に従事し、残りの三か月を芸術家として生きるという。日本人とはなんとまれなる民族だろうか。彼らのあいだでは、西洋芸術を退廃に追いやった芸術家とそれ以外の人々のあいだの悲劇的な隔たりはなかった。日本ではすべての人がいかなることにも従事できた。百姓であると同時に芸術家でもあり得た。芸術とは自然を真似るのではなく、技術を習得し、現実の世界とは異なる世界を創ることだった。日本の版画家たちよりうまくこれをやった者はいなかった。 P472~P473(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • それでおまえは決心したのだ。もう別れる頃合だと。この共同生活はうまくいかないだろう。食卓の会話でそれとなく話題にするように努め、一緒に年越しをしようと予定していたが、もしかすると家族の都合で、年が明ける前にアルルを発つことになるかもしれないと触れて、おまえはそつなく別れの準備をはじめた。そのように取り繕わないほうがよかったのかもしれないね、ポール。オランダ人はおまえがすでに出ていく意思を固めていると気づいて、神経を高ぶらせ、ヒステリー状態になり、精神が不安定になった。愛する人に置き去りにされる絶望した愛人のようだった。目に涙をため、しゃがれた声で、年が終わるまで一緒にいてくれと哀願し、そうでなければ、取り返しのつかない被害を彼に与えでもしたかのように、恨みと憎しみをこめておまえを見つめながら、何日も口をきかなかった。おまえのことを、強くて闘士であると見込んでしがみつこうとしている、世間に対して無力で見捨てられたその人間に、おまえは限りない哀れみを感じた。けれども、そうでないときはおまえは憤慨していた。狂ったオランダ人の問題を負わされなくても、おまえにはもうすでに難題が有り余るほどあった。 P336-337(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 今、おまえは狂ったオランダ人を不憫に思い、慈しみの気持ちさえ持つようになった。しかし、一八八八年十月、兄の呼びかけに応じるようにとのテオ・ファン・ゴッホの勧告と圧力を受け入れて、おまえは彼と生活を共にするためにアルルに行き、彼を嫌うようになってしまった。かわいそうなフィンセント!おまえの来訪を待ちわび、おまえと彼が芸術家の共同体ーー真の僧院、小さなエデンの園ーーの開拓者になることを夢想していたのに、その計画の失敗が彼の精神の健康を破壊して気を狂わせ、殺してしまった。 P323(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • バルガス=リョサは十代でサルトルの作品に心酔し、他の多くのラテンアメリカの知識人同様、キューバ革命には当初から支持を表明してきた。だが1968年の旧ソ連によるチェコスロバキア侵略をカストロが支持したこと、それに続いて起こったエベルト・パディジャら五人の作家が自らの反革命活動を自己批判させられた「パディジャ事件」によって、キューバ革命政権と決別した。しかし、それでも当時は、資本主義と社会主義のうちどちらかを選ばねばならないとしたならば、歯を食いしばってでも社会主義と答えると、社会主義への支持を表明していた。それが、平等を志向するような社会よりも、たとえ、独裁的なものであれ自由な社会にはより多くの自由がある、との彼の発言が示しているように、現存の社会主義のあり方を否定する一方で、現代資本主義への批判的な観点を喪失してしまったような姿勢が、読者たちの戸惑いの原因だった。 P496(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 狂ったオランダ人の思い出は、アトゥオナで暮らしはじめて数か月、ほとんど一瞬たりともおまえから離れることがなかった。どうしてだろうか、コケ。ほぼ十五年のあいだは、おまえの記憶から彼をきれいに消し去ることができていた、疑いなく幸運なことだった。なぜならフィンセントの思い出はおまえを落ち着かない気持ちにさせ、苦しめ、おまえの仕事をだめにしてしまったかもしれないから。けれどもここ、マルキーズ諸島では、おまえもあまり絵を描かなくなっていたから、あるいは疲れていたし病気でもあったから、心遣いの細やかさと狂気を伴った、人の善いフィンセント、かわいそうなフィンセント、我慢のならないフィンセントのイメージが絶えずおまえの意識になだれこんでくるのを阻む手だてがなかった。プロヴァンスで八週間に及ぶ困難な共同生活をしたときの数々の出来事、逸話、論争、憧れ、夢は、あれから十五年を経て、数日前の出来事さえすっかり忘れがちな現在の記憶状況でも、ポールは鮮やかに思い出すことができた。 P322(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • その自画像を描いていて、アルルの「黄色い家」に雨と北西風に閉じ込められたあの数週間に、オランダ人を虜にした花、ひまわりを描くフィンセントの肖像画を描いたことをポールは思い出した。彼は飽きずにいつもその花を描いていた。 P335(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • なんて苦しいコルセットだろう。コルセットについては『メフィス』という小説の中でおまえは痛烈な批判をしていて、未来社会では不適切な衣類として禁止されるだろう、女性を腹帯を締めた雌馬のように感じさせるから、と述べている P262(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
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