『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)』の読書ノートリスト
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- 【第六講 見えないのに見えている】 無意識的知覚の証拠:「カクテルパーティ効果」。パーティで,人の輪に加わって談笑している。その話題に熱中していても,背後の別のグループの会話の中に,たとえば自分の名前が出てきたりすると,突然それが聞こえ,そちらの会話に注意が向いてしまう。はじめ自分のグループの会話だけに集中していて,周囲の会話はまったく意識されていなかったのに。 「前注意過程」=自覚化されないがある程度の処理をおこなっている「前処理」過程を想定。自覚化され意識されている現在の会話の背後で,この無自覚的過程がひそかに働いていて,自分の名前のような極度に重要な情報が入った場合だけ,信号を送って意識のチャンネルを切り替える。 視覚のほうでも,これとよく似た前注意過程の存在が推定されている。 注意の二過程説:前注意過程=無自覚的過程。注意過程=自覚的過程。 単語などの認知情報処理には二種類の過程がある。 1.無意識的な認知過程。自動的で無意識的ですばやく,意図による抑制の効かない活性化のプロセス。 2.意識的な認知過程。意識的で意図による抑制が効くが,遅くて処理容量に限界があるプロセス。 このような二過程説ときわめてよく似た二過程説が,単語の意味のような言語的プロセスだけではなくて,より広く知覚一般に成り立つ。これは脳神経の情報処理のある一般的な構造を反映するとともに,自覚できるメンタル・プロセスと無自覚的なメンタル・プロセスの関係についても,重要な一般的な原理を示している。 1970年代に現れたふたつの有力な方法論によって,潜在知覚研究の別の波がやってくる。 1.逆行性マスキング:ターゲットを瞬間呈示した直後にマスキングと呼ばれる別の強い刺激を呈示して,ターゲットを見えなくする方法。 2.意味的(間接)プライミング:意味的に関連のあるプライミング語をあらかじめ呈示しておくことによって,それに続くターゲット後に対する認知・判断が促進される。 視知覚機能には大きく分けてふたつある。 1.検出と定位に関する機能(別の解釈では行動に直結する機能)。 2.対象の特徴と分析と認知に関する機能。 このふたつは脳内の視覚神経経路としてある程度独立のものであり,並列的に働いている可能性がある。さらに,検出・定位機能にかかわるのは皮質下の経路で,自覚なしにも働きうる。 (チーズマンとメリクルの実験。「意識を伴わない知覚情報処理も,より敏感なプライミング効果には反映される」というマーセルやバロッタたちの結論を否定。)ほとんど見えた気がしない場合ですら,無理やりあて推量で「あったかなかったか」どちらかを選べば,90パーセント近く正答できた。 「あったかなかったか」の検出課題のほうが,形態や意味の類似性判断よりも実は難しく,あるいは判断があてにならない。 (続きを読む)
masudakotaro さん(2013/08/10 作成)