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『文学・評論』関連の引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    ここのところの性的興奮に彼は苦しんでいた。彼は「姦淫すること」(ルーテル派の元説教師はこの言葉を使っていた)に用いるエネルギーは、芸術家としての仕事に向かうエネルギーを減少させていると思い込んでいた。元牧師の清教徒的偏見をポールはからかった。彼にとっては反対に、ペニスが満足していなければ、絵筆を取る勢いがまったくなかった。 「ちがう、ちがう」激昂しながら、狂ったオランダ人は言った。「俺の傑作はセックスを完全に絶っているとき描いたんだよ。精液で描いた作品だ。そのセックス・エネルギーを、女にじゃなくてキャンヴァスにぶちまけたんだよ」 「バカなこと言うなよ、フィンセント。それなら、俺には余りあるほどのセックス・エネルギーがあるってことじゃないか。絵にも女にも回せるだけのよ」 P326(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    「黄色い家」では最初からすべてがうまくいかなかった。まず、ポールは散らかっているのを我慢できなかったが、フィンセントにとってそれは当たり前の状態だった。二人は仕事もきっちり分担した。ポールが料理をし、オランダ人が買い物をした。掃除についてはある日一方が掃除をしたら、次の日は他方が行った。本当のところは、ポールが片付けて、フィンセントが散らかした。 P325(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    けれども、今、距離を置いて、壮大な眺めが広がっている「愉しみの家」で思い返してみると、激しやすく子供っぽくて、病人が命を救ってくれる医師に頼るように、おまえに頼りきっていた、その狂ったオランダ人は無防備なほどお人好しで、このうえなく寛容だった。人を妬まず、恨みもせず、謙虚に身も心も芸術に捧げて物乞いのような生活をしながら、そのことを全く気にかけていなかった。極度に感じやすく、妄想に取りつかれていたフィンセントは、あらゆる形の幸せから遠ざけられているようにポールには思えた。彼は漂流者が板切れにつかまるようにおまえにしがみつき、ジャングルの中で生き延びる方法を教えてくれる賢者か猛者のようにおまえを信じ切っていた。それほど大きな責任をおまえに課したのだよ、ポール。フィンセントは、芸術にも、色彩にも、絵にも精通していたが、人生については何もわかっていなかった。だから彼はいつも不幸だったのだ。だから狂って、三十七歳の若さで腹にピストルの弾を撃ち込んで死んでしまったのだ。それなのに軽薄な奴らが、パリの暇人どもらが、フィンセントの悲劇をおまえのせいにするなんて、なんて不当なことだろう。アルルで共同生活をしていた二か月のあいだにも、おまえはもう少しで気が狂ってしまいそうだったし、そのうえ、オランダ人画家によって殺されそうだったのに。 P325(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    フィンセントは、ポールが気に入るように、新しい家で絵を描きたい気分になるようにと細部にいたるまで気を配りながら、夢中になって昼も夜も働いて、その家にペンキを塗り、家具を入れ、飾り付けをし、壁を絵で埋めていた。 けれどもお前には「黄色い家」は居心地がよくなかったね、ポール。というよりも、視線を移すとどこからも攻撃的に襲ってくる、まぶしくてくらくらする色彩の洪水に気分が悪くなった。またフィンセントが心遣いをしながら、またへつらいながらおまえを迎え、おまえにいい印象を与えようとして「黄色い家」で彼がやったことを誇示しながら案内し、それらがおまえに気に入ってもらえたかどうかを知ろうとやきもきしているのも、居心地が悪かった。実際、その家はおまえに警戒心を抱かせ、なにか圧迫感を与えた。フィンセントは過剰ともいえるほど愛情にあふれ、親切だったので、おまえは最初の日から、この手の人間はおまえの自由を束縛することになるのではないか、そして自分の生活というものがなくなってしまうのではないか、フィンセントがおまえの生活に入り込んできて、愛情いっぱいの看守人となるのではないか、と感じ始めていた。おまえのように自由な人間にとって、この「黄色い家」は監獄になる可能性があった。 P324(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    今、おまえは狂ったオランダ人を不憫に思い、慈しみの気持ちさえ持つようになった。しかし、一八八八年十月、兄の呼びかけに応じるようにとのテオ・ファン・ゴッホの勧告と圧力を受け入れて、おまえは彼と生活を共にするためにアルルに行き、彼を嫌うようになってしまった。かわいそうなフィンセント!おまえの来訪を待ちわび、おまえと彼が芸術家の共同体ーー真の僧院、小さなエデンの園ーーの開拓者になることを夢想していたのに、その計画の失敗が彼の精神の健康を破壊して気を狂わせ、殺してしまった。 P323(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    狂ったオランダ人の思い出は、アトゥオナで暮らしはじめて数か月、ほとんど一瞬たりともおまえから離れることがなかった。どうしてだろうか、コケ。ほぼ十五年のあいだは、おまえの記憶から彼をきれいに消し去ることができていた、疑いなく幸運なことだった。なぜならフィンセントの思い出はおまえを落ち着かない気持ちにさせ、苦しめ、おまえの仕事をだめにしてしまったかもしれないから。けれどもここ、マルキーズ諸島では、おまえもあまり絵を描かなくなっていたから、あるいは疲れていたし病気でもあったから、心遣いの細やかさと狂気を伴った、人の善いフィンセント、かわいそうなフィンセント、我慢のならないフィンセントのイメージが絶えずおまえの意識になだれこんでくるのを阻む手だてがなかった。プロヴァンスで八週間に及ぶ困難な共同生活をしたときの数々の出来事、逸話、論争、憧れ、夢は、あれから十五年を経て、数日前の出来事さえすっかり忘れがちな現在の記憶状況でも、ポールは鮮やかに思い出すことができた。 P322(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    描き終えたとき、おまえは何夜も徹夜して、寝室のほの暗いランプの明かりで友人たちに手紙を書いた。その中でおまえは、とうとうあの平凡な人々の田舎風で迷信深い純真さに迫ることができた、彼らは自分の簡素な生活と古くからの信仰の中で、現実と夢、事実と幻想、実際に見えるものと幻影との区別ができないようだ、と書いていた。シュフや狂ったオランダ人に対しては、『説教のあとの幻影』はリアリズムを爆破していて、芸術は自然界を模倣することなく、夢を通して直接肌で感じる生活を抽象化し、神の行為ーー創造することーーをしながら、神という模範に従っていく時代を創始したものである、と断言していた。これは芸術家の義務であるーー模倣するのではなく、創造すること。今後、芸術家は奴隷のような束縛から自由になって、現実とは異なる世界を創造するために、いかなることにも挑むことができるだろう。 P284(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    なんて苦しいコルセットだろう。コルセットについては『メフィス』という小説の中でおまえは痛烈な批判をしていて、未来社会では不適切な衣類として禁止されるだろう、女性を腹帯を締めた雌馬のように感じさせるから、と述べている P262(続きを読む
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    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    青いビロードの中国風の椅子、そこにおまえはアンナを、神を冒涜するような卑猥なポーズで座らせていたね。ジャワ女の両脇、木製の肘掛では、おまえが創りだした二つのタヒチの偶像が、力強い異教徒の権威をもって西洋とその上品ぶったキリスト教をきっぱりと放棄しているかのように、反旗を翻していた。 ~象徴主義とそれらのイメージの精緻さを学びながら、おまえは今、直観的に察知していたものを、ついにはっきりと見えるようになったのだ。大勢の画家たちの命を奪った肺結核の影響もあるが、ヨーロッパ美術は脆弱になっており、ヨーロッパによっていまだ損なわれていない原始的文化ーーそこではまだ地上の楽園が存在しているーーに湯浴みして活力を取り戻すことだけが、それを退廃から救ってくれるのだ。 P112(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
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