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『文学・評論』関連の引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    それでおまえは決心したのだ。もう別れる頃合だと。この共同生活はうまくいかないだろう。食卓の会話でそれとなく話題にするように努め、一緒に年越しをしようと予定していたが、もしかすると家族の都合で、年が明ける前にアルルを発つことになるかもしれないと触れて、おまえはそつなく別れの準備をはじめた。そのように取り繕わないほうがよかったのかもしれないね、ポール。オランダ人はおまえがすでに出ていく意思を固めていると気づいて、神経を高ぶらせ、ヒステリー状態になり、精神が不安定になった。愛する人に置き去りにされる絶望した愛人のようだった。目に涙をため、しゃがれた声で、年が終わるまで一緒にいてくれと哀願し、そうでなければ、取り返しのつかない被害を彼に与えでもしたかのように、恨みと憎しみをこめておまえを見つめながら、何日も口をきかなかった。おまえのことを、強くて闘士であると見込んでしがみつこうとしている、世間に対して無力で見捨てられたその人間に、おまえは限りない哀れみを感じた。けれども、そうでないときはおまえは憤慨していた。狂ったオランダ人の問題を負わされなくても、おまえにはもうすでに難題が有り余るほどあった。 P336-337(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    バルガス=リョサは十代でサルトルの作品に心酔し、他の多くのラテンアメリカの知識人同様、キューバ革命には当初から支持を表明してきた。だが1968年の旧ソ連によるチェコスロバキア侵略をカストロが支持したこと、それに続いて起こったエベルト・パディジャら五人の作家が自らの反革命活動を自己批判させられた「パディジャ事件」によって、キューバ革命政権と決別した。しかし、それでも当時は、資本主義と社会主義のうちどちらかを選ばねばならないとしたならば、歯を食いしばってでも社会主義と答えると、社会主義への支持を表明していた。それが、平等を志向するような社会よりも、たとえ、独裁的なものであれ自由な社会にはより多くの自由がある、との彼の発言が示しているように、現存の社会主義のあり方を否定する一方で、現代資本主義への批判的な観点を喪失してしまったような姿勢が、読者たちの戸惑いの原因だった。 P496(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    今、おまえは狂ったオランダ人を不憫に思い、慈しみの気持ちさえ持つようになった。しかし、一八八八年十月、兄の呼びかけに応じるようにとのテオ・ファン・ゴッホの勧告と圧力を受け入れて、おまえは彼と生活を共にするためにアルルに行き、彼を嫌うようになってしまった。かわいそうなフィンセント!おまえの来訪を待ちわび、おまえと彼が芸術家の共同体ーー真の僧院、小さなエデンの園ーーの開拓者になることを夢想していたのに、その計画の失敗が彼の精神の健康を破壊して気を狂わせ、殺してしまった。 P323(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • ポケットに物語を入れて
    P.16 冬の日差しは夏よりも尖っていて、木々や家々の輪郭をよりくっきりと光らせる。空気が澄んでいて、遠くの山は書き割りみたいに迫って見える。夕方前にはもう、光景に淡い金粉がまぶされ、暮れはじめた空には一番星が光る。月も星もくっきりと瞬く。生きることの残酷さが、強いものと弱いもののものがなしさが、冬の日射しのなかに少しだけやわらぐ。「すべてのあらゆるいきものは、みんな気のいい、かわいそうなものである。けっして憎んではならん。」冬の日にこそ、こんな言葉はあったかく響く。(続きを読む
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    popohidroさん
    popohidro さん(2015/01/12 作成)
  • ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)
    人はよく幸福と快活を混同するのだが、幸福は必ずしも派手で明るくて賑やかだとは限らないのだ。幸福は、種子のない、薄い皮の中でほの赤く甘くなるスイカのように熟すものだ。スイカのように、地味な暗い色をした皮ですっぽり包まれていることがあるのだ。(続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2014/12/22 作成)
  • 読書家の新技術 (朝日文庫)
    p.176 他の外国人とは何人のことだろう。フランス人か、ルーマニア人か、リヒテンシュタイン人か、アルゼンチン人か、ヌビア人か、ケニア人か、パキスタン人か、ネパール人か。新聞記事にはっきり書けないような外国人というものがあるらしい。どこの民族とも、過去を隠蔽したり美化することなく、友好を深めなければならないはずではないか。日本が侵略、併呑する側にあった支那(引用注:呉はあえてこの名称を使っている)、朝鮮人民に対して友好を深めるためにこそ、歴史の糊塗をいましめなければならない。この記事から二年後に、教科書の「侵略」糊塗騒ぎが起きている。(続きを読む
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    BafanaBafanaさん
    BafanaBafana さん(2015/01/20 作成)
  • 対岸の彼女 (文春文庫)
    「あたし明日お金作ってくるよ」  無表情で言った。葵はナナコが何を言っているのかまるでわからなかった。 「は? どうやって?」数秒後、ようやく葵は言った。 「だから、一番かんたんな方法でお金を稼ぐって言ってるの。あのね、言わなかったけどあたし知ってるの。ひとりでバイト捜しにいったとき、男の人が女の子に声かけるようなところ、見つけたの。あたしも声かけられたし。あたし、そういうの全然平気だから、もし本当にお金が」 「だってナナコ処女でしょ」ナナコを遮って葵は言い、言ってから、なんて馬鹿みたいなことを言っているのだろうと、自分にあきれかえる。 「ねえ、前も言ったけど、あたし、大切じゃないものって本当にどうでもいいの。本当に大切なものは一個か二個で、あとはどうでもよくって、こわくもないし、つらくもないの」  ナナコは葵の目を見据えて、ひどく静かな声でそう言った。やめてよそんな馬鹿みたいなこと、と言おうとして、けれど葵は何も言えずにナナコを見つめかえす。本気なんだろうと葵は思った。この女の子は本当に、躊躇も不安もなく、街角に立って声をかけてきた見知らぬ男についていくのだろう。それでなんにも傷つかないのだろう。何もかもその深い空洞に吸いこまれてしまうのだろう。  あのとき帰りたくないとナナコはどうして言ったんだろうと、目を合わせたまま葵は考える。いじめられることがつらいんだと思っていた。あの、打ちすてられたような家が嫌いなんだろうと思っていた。未来のなさが、選択のなさが息苦しいんだろうと思っていた。けれど、そんなことはこの女の子にとってすべてどうでもいいことだったんじゃないかと、今思う。だとしたらいったいなぜ、帰りたくないと泣いたのか。帰りたくないその理由はなんだったのか。  すっと背中が冷たくなった。断崖絶壁に立って足元を見下ろしているような気がした。(続きを読む
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    itokoさん
    itoko さん(2012/10/31 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    その自画像を描いていて、アルルの「黄色い家」に雨と北西風に閉じ込められたあの数週間に、オランダ人を虜にした花、ひまわりを描くフィンセントの肖像画を描いたことをポールは思い出した。彼は飽きずにいつもその花を描いていた。 P335(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 夜になるまえに

    夜になるまえに の引用ノート

    レイナルド アレナス / 国書刊行会

    植物は誰が自分を愛してくれるか、誰が自分のことを理解できないかが分かり、不慣れな人間が世話をすれば大きくならないし実もつけない。土地を耕す資格があるのは田舎に住んで自然を愛し、その秘密を知る人たちだけだ。土地を耕すことは愛情の行為であり、伝承的な行為である。植物や種は世話をしてくれる人に、何も言わなくても分かりあえる、そんな関係を求めるのだ。 P101(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2013/08/21 作成)
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