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『文学・評論』関連の引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    口論は夜明けまで続いた。おまえは言い争ってもすぐに忘れるたちだったね、ポール。けれどもフィンセントはそうではなかった。彼はいつまでも青ざめたままでひどく不安そうで、何日もそのことについてぶつぶつ文句を言っていた。狂ったオランダ人にとって重要でない、どうでもいいものは何一つなかった。すべてが生存の神経中枢に触れ、神、生、死、狂気、芸術など大きな課題に結び付けられていた。 P327(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    長いあいだ、アブサン酒をちびちび飲みながら、フィンセントはときにはおまえの理解を超えるようなことを話した。けれども、夜明けにフィンセントが、目に涙をためてうめくようにして言った言葉を、おまえは理解したし、けっして忘れはしなかった。 「自分の絵が人々に精神的な慰めを与えられたら、と俺は思っているんだよ、ポール。キリストの言葉が人々に慰めを与えたようにな。古典絵画では『光輪』は永遠を意味していた。その『光輪』とは今、俺が絵の中で色彩の放射と振動とで取り戻そうとしているものなんだ」 ポール、おまえには彼の絵で使われている色彩が暴力的で度を越していると思えて、その花火のような眼をくらませる光景が好きではなかったが、それからは、以前よりも敬意を払っていたね。狂ったオランダ人には、おまえの背筋を時にぞくっとさせるような殉教者のような資質があった。 P329(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    その花々にはどこか神々しい天球の炎めいたものが感じられ、フィンセントがそうしたように、もし心をこめてじっと観察したならば、「光輪」が花々を取り巻いているのがわかった。彼はひまわりを描きながら、正真正銘のひまわりでありながら、トーチや大燭台でもあるように努力していた。 P335(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/08 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    フィンセントは、ポールが気に入るように、新しい家で絵を描きたい気分になるようにと細部にいたるまで気を配りながら、夢中になって昼も夜も働いて、その家にペンキを塗り、家具を入れ、飾り付けをし、壁を絵で埋めていた。 けれどもお前には「黄色い家」は居心地がよくなかったね、ポール。というよりも、視線を移すとどこからも攻撃的に襲ってくる、まぶしくてくらくらする色彩の洪水に気分が悪くなった。またフィンセントが心遣いをしながら、またへつらいながらおまえを迎え、おまえにいい印象を与えようとして「黄色い家」で彼がやったことを誇示しながら案内し、それらがおまえに気に入ってもらえたかどうかを知ろうとやきもきしているのも、居心地が悪かった。実際、その家はおまえに警戒心を抱かせ、なにか圧迫感を与えた。フィンセントは過剰ともいえるほど愛情にあふれ、親切だったので、おまえは最初の日から、この手の人間はおまえの自由を束縛することになるのではないか、そして自分の生活というものがなくなってしまうのではないか、フィンセントがおまえの生活に入り込んできて、愛情いっぱいの看守人となるのではないか、と感じ始めていた。おまえのように自由な人間にとって、この「黄色い家」は監獄になる可能性があった。 P324(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • ヴェネツィアが燃えた日 世界一美しい街の、世界一怪しい人々
    オペラ歌手のルチアーノ・パヴァロッティは、フェニーチェ再建資金を募るコンサートを行うと発表した。プラシド・ドミンゴも、負けじと、自分もコンサートを行う、ただし、会場はサン・マルコ大聖堂で、と発表した。パヴァロッティはやり返したーー自分もサン・マルコ大聖堂でコンサートを行うが、自分以外のだれとも合唱は行わない。すべてが順調なら、その月末、改装になったフェニーチェではウディ・アレンのジャズ・バンドが記念演奏を行うはずだったのだが、当のアレンは記者に対して、放火したのは荘厳な音楽の愛好家だったんだろうね、と語った。彼はつづけて言った。「ぼくの演奏が聞きたくなかったのなら、そう言ってくれればよかったんだよ」 P49(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/11/15 作成)
  • ぼくと「ジョージ」 (岩波少年文庫)
    週の初めにはその金曜日のことを思って楽しんだ。人はいつも考え続けられるいい日を持つべきなのだ。どっちから見てもいい日ーー待っている間も、思い出してみる時も。(続きを読む
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    chiyorinさん
    chiyorin さん(2014/12/22 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    おまえがおまえが狂ったオランダ人に感謝しなければならないとしたら、彼が初めて、おまえの関心をポリネシアに向けてくれたことだ。彼が手に入れ、気に入っていた小説、フランス商船の高級船員ピエール・ロティの『ロティの結婚』のおかげだった。その小説はタヒチが舞台で、そこでは美しく肥沃な自然の中、人々は自由で健全で、偏見も悪意もなく、自然のまま本能のまま快楽に身を委ねながら暮らしていて、野性的な情熱と活力に満ちた、削減する前の地上の楽園だった。人生に矛盾なんてよくあることだよ、ちがうかね、コケ。文明が西洋社会から取り除いてしまった根源的、宗教的な力を求めて、金銭が支配する頽廃したヨーロッパから、エキゾティックな世界へ逃れることを夢見ていたのは、フィンセントだった。けれども彼はヨーロッパの監獄から逃げ出すことはできなかった。それに対して、おまえはタヒチに行ったし、今はマルキーズ諸島まで屋ってきて、狂ったオランダ人が夢みたものを現実にしようとしていた。 「喜んでくれよ。おまえの夢を叶えてやったよ、フィンセント」とコケは声を張り上げて叫んだ。「ほら、ここに『愉しみの家』ができたよ。おまえはアルルで俺の人生をひどく狂わせやがったが、憧れのオルガスムスの家だ。俺たちが考えていたようなものにはならなかったけどね。おい、わかったか、フィンセント」 P328(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    青いビロードの中国風の椅子、そこにおまえはアンナを、神を冒涜するような卑猥なポーズで座らせていたね。ジャワ女の両脇、木製の肘掛では、おまえが創りだした二つのタヒチの偶像が、力強い異教徒の権威をもって西洋とその上品ぶったキリスト教をきっぱりと放棄しているかのように、反旗を翻していた。 ~象徴主義とそれらのイメージの精緻さを学びながら、おまえは今、直観的に察知していたものを、ついにはっきりと見えるようになったのだ。大勢の画家たちの命を奪った肺結核の影響もあるが、ヨーロッパ美術は脆弱になっており、ヨーロッパによっていまだ損なわれていない原始的文化ーーそこではまだ地上の楽園が存在しているーーに湯浴みして活力を取り戻すことだけが、それを退廃から救ってくれるのだ。 P112(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
  • 楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2)

    楽園への道 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-2) の引用ノート

    マリオ・バルガス=リョサ / 河出書房新社

    それで彼は、最後の自画像を描こうと決心した。それは落ちぶれて無為のまま、堕落し、士気喪失したマルキーズの人々の間で、彼らと同じように忘れられた世界の片隅で零落している自分自身の姿を、身をもって証すことだった。彼はイーゼルの横に鏡を置いて、衰えた瞳がようやく捉えた、今にも消えてしまいそうに霞んだその像をキャンヴァスに描き取ろうとして、二週間以上作業をした。間近に迫る避けようもない自分の最期を、屈辱的な眼鏡の奥で視線にその分別をたたえながら静かに見つめている、ぐったりしているがまだ死んでいない男。その視線の中で、冒険や狂気、探究、敗北、闘争に満ちた激しい人生が語られていた。一つの生命には必ず終わりが来るものだよ、ポール。白い短髪に痩せた体躯、そして平然たる大胆さをもって最後の攻撃を待っている。おまえは確信してはいなかったが、たくさん描いてきた自画像ーーブルターニュの農民の姿で、ツボの曲面に描かれたペルーのインカ人の姿で、ジャン・ヴァルジャンになぞらえて、オリーヴ園のキリスト教のように、ボヘミアンとして、あるいはロマンティックな人物像としてーーの中でこれが、別れの、人生の終局を目前にした芸術家の自画像が、もっとも自分を現していると直観的に感じてきた。 P334(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/07 作成)
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