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『文学・評論』関連の引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • 弱法師

    弱法師 の引用ノート

    中山 可穂 / 文藝春秋

    一匹の悪魔と百匹の天使を自身に飼い馴らしているのが作家なら、百匹の悪魔と一匹の天使をおのれの内に棲まわせているのが編集者だ。それがわたしだ。女衒のように作家に近づき、その肉体から彼の命を――小説を――最後の一滴まで絞り取る。からからに涸れ果てるまで、廃人になるまで、自殺して死ぬまで、追い詰めて攻め立てて抱きしめてひれ伏して爆弾を落として夜露に晒して火をつけて水を浴びせて踏みつけて踵を舐めてめったやたらに引き裂いて。この仕事は借金取りに似ている。わたしは神に代わって、作家が神から借りた金――才能――の取り立てをしているのである。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
  • ヴェネツィア 水の迷宮の夢

    ヴェネツィア 水の迷宮の夢 の引用ノート

    ヨシフ・ブロツキー / 集英社

    「さあ、描いてみて!」冬の光が囁く、病院のレンガ塀にせきとめられ、あるいは宇宙の長旅をすませて、やっとのことで聖ザッカリーア教会の切妻壁前(フロントーネ)のパラダイスという故郷に辿りついた時に。地球がその光を運ぶ天体にもう一方の頬っぺたを差し出している間に、聖ザッカリーアの大理石の貝模様の中で、あともう小一時間ほど憩う光の表情には、疲労がただよってくるのが分かる。これが冬の光の一番純粋な時なのだ。その時それは、温度、あるいはエネルギーを持ってはいない。そんなものは、どこか宇宙のかなたに、あるいは近くの積雲の中にでも、捨て去ったのか、それとも置いてきたのだろう。光の粒子の、ただ一つの野望は、物体に届いて――大きかろうが小さろうが――とにかく目に見える画像にすることなのだ。それは親密な光、ジョルジョやベッリーニの光だ。ティエポーロやティントレットの光では決してない。町はその肌ざわり、無限の彼方からやってきた光の愛撫をゆっくり味わいながら、暮れなずんでゆく。形ある物というのは、結局、無限をも親密なものにしてしまうのだ。 P84(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/28 作成)
  • ヴェネツィアが燃えた日 世界一美しい街の、世界一怪しい人々
    というのも、イタリア人にとって、オペラとは単に舞台で演じられる芸術にとどまらないんだよ。オペラを観に行くとはどういう体験かといえば、まずは胸躍る期待からはじまり、その夜のための盛装をし、劇場に向かい、その夜のメイン・イヴェントが演じられる場所に入ってゆく。つまり、一連の愉しみがしだいに深みを増してゆく、一種の祭儀なんだな。舞台が寺院であろうと、円形闘技場であろうと、劇場であろうと、すべての祭儀がそうであるように、そこに至るまでのセッティングこそはその体験の重要な一部なのさ。メドゥーナが企図したのは、劇場内部の装飾が観客席において最高潮に達することだった。 P130(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/11/15 作成)
  • 深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)
     タクシーとは名ばかりで、後部の荷台を取りはずし、むき出しの車体に固い椅子を取りつけた代物のために、しっかりつかまっていないと振り落とされかねない。私を乗せた三輪タクシーは、ニューデリーからオールドデリーの暗い夜道を、音だけは威勢よく走っていった。  しばらくは快調に走り続けていたが、ガソリン・スタンドの前にさしかかったとたん、運転手は車を停め、エンジンを切った。ガソリンがないと言うのだ。もうこれ以上は動かないと言う。そして、私の顔色をうかがいながら提案してきた。 「あそこで入れたいと思うのだが」  私は彼の魂胆が読めたので知らん顔をしていた。 「あそこで入れるがいいか」 「勝手にするがいいさ」  突き放すと、運転手が予想していた通りの台詞を吐いた。 「でも、金がない」 「俺の知ったことではない」 「走れないがそれでもいいか」  その言い草に腹が立ったので、それならここまでの分も払わない、別の車を探すからいい、と言って車から跳び降りると、慌てて、いや、やはり動く、とエンジンをかけた。 (P.28~)(続きを読む
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    h_nagashimaさん
    h_nagashima さん(2012/11/24 作成)
  • 完訳 緋文字 (岩波文庫)

    完訳 緋文字 (岩波文庫) の引用ノート

    N. ホーソーン / 岩波書店

    彼女の運命と趨勢は彼女を自由にしていた。緋文字はほかの女たちが足を踏み入れるのをはばかる地域への旅行免状だった。(続きを読む
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    tmkn さん(2012/11/19 作成)
  • センス・オブ・ワンダー

    センス・オブ・ワンダー の引用ノート

    レイチェル・L. カーソン / 新潮社

    自然界への探検…それは何かを教えるためではなく、いっしょに楽しむためなのです 「知る」ことは「感じる」ことの半分ほども重要ではない… 子供たちがこれからであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子供時代は、この土壌を耕す時です(続きを読む
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    suisuiさん
    suisui さん(2013/04/30 作成)
  • 羅生門・鼻・芋粥・偸盗 (岩波文庫)
    それだからこそ、自分は兄に対しても、嫉妬をする。すまないとは思いながら、嫉妬をする。してみると、兄と自分との恋は、まるでちがう考えが、元になっているのではあるまいか。そうしてそのちがいが、よけい二人の仲を、悪くするのではあるまいか。………『偸盗』より(続きを読む
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    NKazuyoshiさん
    NKazuyoshi さん(2012/11/19 作成)
  • 読書家の新技術 (朝日文庫)
    p.37 だが、そもそも、公認された知の集合・知の世界=教養という時の「公認」には、保守的なものも進歩的なものもともに含まれる。進歩的なものは、保守派にとっても、進歩的なるものとして諒解可能なのである。共産主義は、反共主義者にとって、共産主義なるものとして諒解可能なのである。公認の配分という程度の差こそあれ、進歩も保守も公認教養の中に含まれているのだ。(続きを読む
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    BafanaBafanaさん
    BafanaBafana さん(2015/01/20 作成)
  • 弱法師

    弱法師 の引用ノート

    中山 可穂 / 文藝春秋

    わたしは強いのではない。 まだ誰かを死ぬほど愛したことがないだけだ。 愛するひとにこのからだを愛撫され、その手のかたちで捏ねられ美しく磨き立てられた賜物のような乳房をいまだ持たず、持たざるがゆえに失う悲しみもいまだ知ることがないだけだ。 愛するひとが黄泉の国へ旅立つとき、あの世への手土産に丹精した乳房を差し出すような、なりふりかまわぬ捨て身の恋を一度もしたことがないだけだ。 喉から血を流していとしい誰かの名前を呼び続けたことも、胸の谷間から脂汗を流してかつてそこにあったやさしい手の記憶を反芻し続けたこともない。 わたしは恋も、愛も、天国も、地獄も、何も知らない。 できることなら、こんなふうにぼろぼろになっても、胸がぺしゃんこに潰れるような思いをしても、年を取りすぎた大きい天使になっても、狂ったように愛し愛され、いとしい誰かと手に手を取ってこの世の淵からこぼれ落ちたい。打ちのめされ、追い詰められ、虚無に向かって行進していくような人生でもかまわない。 こんなふうに誰かを、ただひとりのひとを、一生かけて、馬鹿みたいに愛したい。 そうすれば母の人生が、苛烈ではあったけれど不幸ではなかったのだと信じることができるような気がするのだ。 そうして初めて、わたしはわたし自身の罪深い生を受け容れ、赦すことができるような気がするのだ。 そして明日も今日のように生きていけるような気がするのだ。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/08/07 作成)
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