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『文学・評論』関連の引用(抜き書き)読書ノートリスト

引用(抜き書き)『文学・評論』関連の読書ノートリスト

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  • ヴェネツィア 水の迷宮の夢

    ヴェネツィア 水の迷宮の夢 の引用ノート

    ヨシフ・ブロツキー / 集英社

    まるでぼくはあの巨大な水彩画の中の、小さな動く点みたいだった。そしてジョヴァンニ・エ・パーオロ病院のところへ出ると、そこで右に曲がった。その日は暖かくて天気も良く、空は青くてすべてが素晴らしかった。フォンダメンテとサン・ミケーレ島に背を向けて、病院の壁をまるで抱きかかえるように、左肩をほとんど壁にこすりつけながら、太陽に向かって目を細めた。その時だ。突然ぼくは思った。ぼくは猫なんだ。今、魚を食ったばかりの猫。その時誰かがぼくに呼びかけたら、きっとぼくはニャーと返事したことだろう。ぼくは絶対的に、動物的な幸せを満喫していた。それから十二時間後、もちろんニューヨークに着いた後のことだが、ぼくは自分の人生でおそらく最悪の状況に対面した――少なくともその時はそう思えた。でもぼくの中には、猫がまだ居残っていた。その時その猫がいなかったら、ぼくは今、どこかべらぼうに金のかかる精神病院の壁を、よじ登っていたにちがいない。 p106(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/12/28 作成)
  • ヴェネツィアが燃えた日 世界一美しい街の、世界一怪しい人々
    フェニーチェでは、オペラの上演中も客席の照明が完全に消されることはなかった。照明は仄暗い状態が保たれたため、観客は上演中も周囲の彫像を見ることができたんだ。そのとき、彫像は観客の同伴者になった。たとえ劇場に一人で出かけたとしても、周囲の彫像が観劇の相手になってくれたのさ。こういう関係を、現代のモダンな劇場は一切顧慮しない。焦点はひたすら舞台にあって、そこで演じられているものこそが神聖なんだ。観客は静寂を保って、じっと見入らなければならない。現代の劇場は無味無臭の場所であって、優秀な音響効果と、見晴らしのよさは保っていても、温かみのある場内の装飾が一切ない。そこにはもはや共に観劇を楽しんでくれる相手がいないんだよ。 P131(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2012/11/19 作成)
  • 夜になるまえに

    夜になるまえに の引用ノート

    レイナルド アレナス / 国書刊行会

    作家本人とは距離を置いて作品を読んでいるほうがいい、ひどい幻滅を感じるかもしれないから個人的に知り合わないほうがいいとぼくはずっと思ってきた。レサマやビルヒリオ・ピニェーラ、リディア・カブレラとの友情は、三人は人間的にも非凡な人間だったが、離散や中傷がその跡を残していた。やがてぼくは多くの著名な、何人かは有名すぎるほどの作家と知り合ったが、触れないでおきたい。作品を読んでいるときのほうがずっと近くに感じられたのだ。幸いぼくはそうした作家たちの自惚れを忘れてしまっている。それにこの回想録を文学論文にも、また重要と思われている人物との付き合いを公開する報告書にもしたくなかった。というのも、結局のところ、重要というのはいったいどういうことなのだろう。p393(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2013/09/04 作成)
  • 夜になるまえに

    夜になるまえに の引用ノート

    レイナルド アレナス / 国書刊行会

    マイアミに着いたときぼくはいくつか声明を出したが、人にはあまり気に入られなかったと思う。「キューバが地獄なら、マイアミは煉獄です」と言ったからだ。 P378(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2013/08/21 作成)
  • 新装版 俄(下) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
    「そうか、斬るか」  万吉は、ひとごとのようにうなずいた。 「ほなら、すぱっとやって貰オか」 「馬鹿に手軽だな」  斬る側の大石鍬次郎のほうが驚いた。いままでこんな奴にめぐりあったことがない。 「斬られるのは、おぬしだぜ」 「念を押すなよ、気味の悪い」 「押す気にもなる。明石屋、いったいおぬしの心ノ臓はどこについているのだ」 「ここや」  万吉はコブシを宙にあげて空気を掴んだ。 「コブシについているのか」 「いや、ここや」  また、ぱっと虚空をつかんだ。 「どこだ」 「ここや」  ぱっとつかむ。 「わからんな」 「虚空にある」 と、万吉はうれしそうにいった。禅問答のようだが、やがて大石は了解した。万吉のいのちは体内にはなく常に虚空にある、という意味であろう。生命などは空だ、と万吉は言いたいにちがいない。 (P.138)(続きを読む
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    pigeonさん
    pigeon さん(2012/10/13 作成)
  • 桜の首飾り

    桜の首飾り の引用ノート

    千早 茜 / 実業之日本社

    けれど、今のところ老いとは、見えないものが増えていくことのように感じる。それは、肉体的には細かい字だったり、看板だったり、精神的には一般常識だったり、自分自身だったり、他人の感情だったりしているようだった。まるで、どんどんせばまっていく透明の箱に閉じ込められているように見えた。いつかそれが自分にも訪れるかと思うと、空っぽの胃袋みたいなすうすうした気分になった。(続きを読む
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    marie1127さん
    marie1127 さん(2013/12/18 作成)
  • 極北

    極北 の引用ノート

    マーセル・セロー / 中央公論新社

    彼は各地を旅行し、多くの言語を身につけている。人体の筋肉の名称を残らず知っている。私みたいな人間ならここでは一山いくらで手に入る。実際的でタフな心を持ち、ツンドラを漁って命を繋いでいる人間たち。しかしシャムスディンは読書からしか得られない知識を身につけている。それがどれほど現実の役に立つのか、私にもわからない。ときとしてそれが愚かしく、いささか奇妙に――まるで囚人が絹のネクタイを結んでいるみたいに――見えることも確かだ。しかし我々より知識のある人々の間では、彼の持っている知識は貴重なものとされてきた。彼の頭の中にあるのは、何世紀にもわたって蓄積されてきたものだ。多くの血がそのために流されるだけの価値のある、大事なものだった。彼が知識として身につけている事実が解明されるために、一千年もの研究の歳月が費やされたのだ。科学と実証の一千年――そこでは「地球が太陽のまわりを回っているのであって、その逆ではない」と主張するために人は命を落とすことさえいとわなかった。それがいったん失われてしまえば、同じものごとを再び学びとるのに、更なる一千年が必要になるだろう。 P213(続きを読む
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    haruga6さん
    haruga6 さん(2013/03/08 作成)
  • 新装版 俄(上) 浪華遊侠伝 (講談社文庫)
     その夜、万吉はいったん帰宅し、なにごともわすれて眠った。 「夜はものを考えぬ」  というのが、万吉の処世術である。深夜ものを考えると来し方行くすえのことがあたまのなかに去来し、考えることが自然萎れてきて消極的になるからだ。(続きを読む
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    pigeonさん
    pigeon さん(2012/11/24 作成)
  • 青年 (新潮文庫)
    とにかく、君、ライフとアアトが別々になっている奴は駄目だよ」  純一は知れ切った事を、仰山らしく云っているものだと思いながら、瀬戸が人にでも引き合わせてくれるのかと、少し躊躇《ちゅうちょ》していたが、瀬戸は誰やら心安い間らしい人を見附けて、座敷のずっと奥の方へずんずん行って、その人と小声で忙《せわ》しそうに話し出したので、純一は上り口に近い群の片端に、座布団を引き寄せて寂しく据わった。  この群では、識《し》らない純一の来たのを、気にもしない様子で、会話を続けている。  話題に上っているのは、今夜演説に来る拊石である。老成らしい一人《いちにん》が云う。あれはとにかく芸術家として成功している。成功といっても一時世間を動かしたという側でいうのではない。文芸史上の意義でいうのである。それに学殖がある。短篇集なんぞの中には、西洋の事を書いて、西洋人が書いたとしきゃ思われないようなのがあると云う。そうすると、さっき声高に話していた男が、こう云う。学問や特別知識は何の価値もない。芸術家として成功しているとは、旨く人形を列《なら》べて、踊らせているような処を言うのではあるまいか。その成功が嫌《いや》だ。纏《まと》まっているのが嫌だ。人形を勝手に踊らせていて、エゴイストらしい自己が物蔭に隠れて、見物の面白がるのを冷笑しているように思われる。それをライフとアアトが別々になっているというのだと云う。こう云っている男は近眼目がねを掛けた痩男《やせおとこ》で、柄にない大きな声を出すのである。傍《そば》から遠慮げに喙《くちばし》を容れた男がある。 「それでも教員を罷《や》めたのなんぞは、生活を芸術に一致させようとしたのではなかろうか」 「分かるもんか」  目金《めがね》の男は一言で排斥した。  今まで黙っている一人の怜悧《れいり》らしい男が、遠慮げな男を顧みて、こう云った。 「しかし教員を罷めただけでも、鴎村なんぞのように、役人をしているのに比べて見ると、余程芸術家らしいかも知れないね」  話題は拊石から鴎村に移った。  純一は拊石の物などは、多少興味を持って読んだことがあるが、鴎村の物では、アンデルセンの飜訳《ほんやく》だけを見て、こんなつまらない作を、よくも暇潰《ひまつぶ》しに訳したものだと思ったきり、この人に対して何の興味をも持っていないから、会話に耳を傾けないで、独りで勝手な事を思っていた。  会話はいよいよ栄《さか》えて、笑声《わらいごえ》が雑《まじ》って来る。 「厭味だと云われるのが気になると見えて、自分で厭味だと書いて、その書いたのを厭味だと云われているなんぞは、随分みじめだね」と、怜悧らしい男が云って、外の人と一しょになって笑ったのだけが、偶然純一の耳に止まった。  (続きを読む
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    Majorさん
    Major さん(2012/11/11 作成)
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