【第6章 会社の価値観を植え付ける】
企業家は、会社の発足当初から、社内文化や価値観、指導理念を組織に浸透させなければならない。それが会社の方針や雇用、経営戦略を決める基盤になる。
CEOであろうと幹部社員であろうと、毎日仕事をするに当たって一番大切なのは、会社の価値観をほかの社員、とくに新入社員に啓蒙することだ。企業の規模にかかわりなく、正しい社内文化を確立しなければ成功はおぼつかない。
会社を組織してみれば、自分一人では何もできないことがすぐわかる。心から信頼でいる協力者、自分とは違う能力を持ち、価値観が同じ人物を発見できれば、さらに強力な企業を築くことができる。
事業の成否はどんな社員を採用するかによって決まる。
私たちはみな自分たちの会社を心から信頼し、いつか世界的な大企業に発展することを疑う者は一人もいなかった。
自分の夢がまさに壊れようとする人生の土壇場を経験した人は大勢いるはずだ。このような事態にあらかじめ備えておくことはできない。しかし、問題はどのように対処するかにある。どんなときにも自分の価値観を忘れてはならない。大胆かつ公正に行動し、決してあきらめてはならない。会社を支える人々が誠実であれば、さらに大きく成長できるのだ。
【第7章 現実を見つめ,夢に挑む】
事業計画書などは単なる紙切れに過ぎない。いかに見事な事業計画でも、社員がそれを受け入れてくれなければ何の価値もないのだ。社員が経営者と同じ気持ちになり、心底やり遂げようと決意しなければ、事業を継続することは愚か、軌道に乗せることすらおぼつかない。そして社員は、経営者の判断が信頼でき、なおかつ自分たちの努力が認められ正当に評価されるのだと実感したとき、初めて計画を受け入れるのだ。
究極の事業像=社員が互いに尊敬しあう社風を育むこと。
全社員が共通のビジョンを抱かなければ、われわれの目標は達成できない。
【第9章 社員は経営の道具ではない】
小売店やレストランでは,顧客がどのような体験をするかですべてが決まる。たった一度悪印象を与えただけで,永久にその顧客を失うことになるのだ。パートタイマーとして働く20代の学生や俳優志願者の手に会社の命運が託されているのであれば,彼らを消耗品のように扱ってよいはずがない。
社員を家族のように扱えば社員は誠実に働き,持てる能力のすべてを発揮してくれるだろう。会社が社員を支えれば,社員も会社を支えるようになる。
(1988年の末に全パートタイマーに対して社員と同じレベルの健康保険を適用することになったことについて。)私はパートタイマーがスターバックスにとって極めて重要な存在であることを訴えた。事実,全社員の3分の2はパートタイマーで占められていた。スターバックスの店は開店時間が早く,朝の5時半や6時から営業を開始する場合もある。また,閉店時間も夜の9時過ぎになることが多い。したがって,短時間の交代制勤務に応じてくれるパートタイマーへの依存度が高くなる。パートタイマーは,学生もしくは他の仕事と掛け持ちの人が多い。こうした人々も正社員と同じように健康保険を必要としており,会社は彼らの貢献に対して十分報いるべきである,と私は力説した。
他の小売業では店長の離職率がおよそ50%であるのに対し,スターバックスではわずか25%となっている。
健康保険制度の導入により社員の態度に大きな変化が見られるようになった。会社が社員を優遇すれば,社員は何事にも積極的な姿勢で臨むようになるのだ。
今日でも,スターバックスと同規模の企業で,パートタイマーを含めた全社員に健康保険を適用しているところはほとんどない。
ミッション・ステートメントは,利益の追求よりも社員を最優先する内容となった。
ミッション・レビュー制度。社員は誰でも,会社の目的に反すると思うことがあれば,その問題について報告し意見を述べることができる。
経営陣と社員が率直に意見交換を行うための重要な場を提供。
ビーンストックの導入で,スターバックスの全社員が経営のパートナーとなったのだ。
従業員持株制度は増資を主目的とするものなのだ。
会社の発展がもたらす恩恵を社員にも共有させ,彼らの貢献が会社の価値を高めていることをはっきりとした形で示したかったのである。
私の知るかぎり,これほど広範囲の社員を対象に大がかりなストックオプション制度を導入している企業はスターバックス以外にない。
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